そして、このほどサンプル出荷を開始した802.11pモジュール「THEO-P1」は、MK5をベースにしながら、GPSモジュール/セルラーモジュールを自動車/産業機器向け市場に提供し続け蓄積してきたu-bloxの信頼性向上技術や、暗号処理などを行うハードウェアアクセラレータを盛り込んだ。「V2X用の802.11pモジュールは当然、車載品質をうたう製品ばかりだが、その中で(車載品質規格である)AEC-Q100を取得しているTHEO-P1は、自動車に搭載した場合の実際の性能安定性などで競合製品を上回っていると自負している」と、Meimetis氏は自動車での実使用を意識した設計であることを強調する。THEO-P1の性能の高さを示す一例として、アンテナ部とモジュールとのケーブル長を長くできる点を挙げる。802.11pモジュールは、アンテナ部と同軸ケーブルで接続する必要がある。当然、同軸ケーブル長が長くなると信号損失が発生するため、モジュール性能が劣れば、ケーブル長を短くするか、信号損失を補う外部部品を負荷する必要がある。「競合製品の多くは、1m程度の同軸ケーブル長にしか対応しないが、THEO-P1は最大3mまで安価な同軸ケーブルで配線できる。高価なケーブル、コンポーネントを使用せず、競合に比べ12米ドル程度のコスト削減が可能だ」と言い切る。
2020年ごろのV2X市場の立ち上がりに向け、u-bloxは、THEO-P1の拡販を全世界規模で実施する。Meimetis氏は、「既に、MK5は複数のユーザーが存在する製品であり、MK5が進化したTHEO-P1の採用も確実に広がっていくだろう」と自信をのぞかせる。さらに、Meimetis氏は、「THEO-P1はあくまで、第1世代の製品であり、今後、THEO-P1の提案を通じて得る市場ニーズを反映した第2世代品をTHEO-P1の量産を開始する2017年1〜3月以降に、サンプル出荷したい」との計画を語る。
第2世代品については「GPS/セルラーモジュールでもそうしてきたように、より小さく、より低消費電力なモジュールを提供し続けていく。第1世代では、市場投入を急ぐために、MK5の設計資産を獲得し、パートナー企業のシリコンを使用したモジュールとなったが、第2世代では、社内に既にあるシリコン設計リソースを活用して、自社設計シリコンを搭載する可能性もあるだろう」とよりu-bloxらしさを打ち出した製品に仕上げる方針を示す。
「V2Xでは、高精度な測位技術も同時に必要になる。この両方のシステムをカバーできるのは、当社の強み。V2Xやセルラーを使ったテレマティックスを活用した超高精度測位技術を生み出すといったイノベーションを起こす可能性も当社だけが持ち合わせていると考えている。今後は、V2X、テレマティクス、測位の各モジュールを進化させるだけでなく、それぞれを連携させたソリューション開発も積極的に行っていく」としている。
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