東京大学物性研究所らの共同研究グループは、太陽光による水分解を極めて高い効率で行うことができるナノコンポジット結晶を開発した。水素ガスを効率よく生成することが可能となる。
東京大学物性研究所は2016年6月、名古屋大学、高エネルギー加速器研究機構、東京理科大学と共同で、太陽光による水分解を極めて高い効率で行うことができるナノコンポジット結晶の開発に成功したと発表した。
共同研究グループは、ナノコンポジット結晶を簡便に作製するためのプロセスを新たに開発した。ナノコンポジット結晶は、酸化物の薄膜と、直径が5nmで長さが20nmと極めて微細な金属ナノ柱状結晶で構成された構造となっている。
具体的には、パルスレーザー堆積法を用いて、高品質の薄膜を作製すると同時に、微細な金属の柱状結晶を自己集積的に成長させる独自のプロセスを開発した。これにより、電極として機能する光触媒薄膜の開発に成功した。開発したナノコンポジット構造を光触媒として利用したところ、太陽光による水分解光電極反応の効率が著しく向上することが分かった。
共同研究グループは、薄膜内に無数のナノ柱状結晶を分散することで、水の分解反応を促進することに成功した。特に、水分解光電極反応は、ナノ柱状結晶の構成元素として、イリジウム(Ir)金属やチタン酸ストロンチウム(SrTiO3)を組み合わせたことにより、極めて高い効率を得ることができたという。
この他、ナノ柱状構造を埋め込んだコンポジット結晶は、水の中で電極として長時間使用しても安定している。製造も1回のプロセスで済むなど簡便である。共同研究グループは、今回開発した製造プロセス及びナノ構造のコンポジット材料について、高効率のエネルギー変換材料やデバイスの作製を可能とし、二酸化炭素を排出しないクリーンな水素社会の実現に貢献できる技術とみている。
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