キュウ氏は「もちろん、どのネットワーク技術が最も優れているかという話ではない。それぞれの技術に合ったシナリオ(ユースケース)がある」と前置きした上で、NB-IoTは、3GPPにより標準化されていること、既存の基地局を使えること、(セルラーIoTの中でも)低消費電力なこと、といった理由から、普及しやすい素地を持っていることを示唆した。
ファーウェイは既に、基地局向けにNB-IoT対応のソフトウェアを準備している。キュウ氏によれば、「当社の基地局を使っているオペレーターは、ソフトウェアをアップグレードすればNB-IoTを使えるようになっている」という。さらにファーウェイは、NB-IoT対応のチップセットも用意している。
キュウ氏は「もう1つ、われわれはパートナー各社と共同で、NB-IoTに向けたさまざまなユースケースを開発している」と述べる。技術があってもユースケースがなければ、その技術は普及しないからだ。
同氏はファーウェイが考えているユースケースについて、「3つのA、2つのE、2つのMから成る7つの分野」を挙げた。3つのAとは「Automotive(自動車)」「Asset Tracking(資産トラッキング)」「Agricultre(農業)」、2つのEは「Energy(エネルギー)」と「Environment(環境)」、2つのMは「Metering(スマートメーター)」と「Municipal(都市行政)」を指す。
キュウ氏が特に有力なユースケースとして挙げるのが、スマートパーキングだ。ファーウェイが2016年11月に発表した「Smart Transportation」のレポートには
という調査結果が報告されている(参考「Huawei Smart Transportation」)。スマートパーキングを導入すれば、こうした問題の緩和が大いに期待できる。
今回のMBBフォーラムでは、ソフトバンクがNB-IoTを使用したスマートパーキングシステムのデモを披露した(関連記事:ソフトバンクがNB-IoTの屋外デモ、「国内初」)。屋外でNB-IoTのデモを行ったのはソフトバンクが「国内初」(同社)としている。ソフトバンクは、NB-IoTの他、同じセルラーIoTである「LTE-Cat 1」「LTE-Cat M」を、2017年夏から順次、全国に展開していく予定だ。
スマート農業やスマートメーターも、NB-IoTに極めて適したユースケースだと、キュウ氏は説明する。「温湿度センサーなどをビニールハウスや土の中に取り付けることで、より細かく環境をモニタリングできる。それによって収穫高が上がるというデータがある。スマートメーターについては、特に国土が広い国での需要が高い」(同氏)
キュウ氏は、NB-IoTの課題について「技術的な課題はほとんどクリアされているが、アプリケーションの開発に時間がかかるだろう。とにかく数が多いからだ。先ほど、ファーウェイが考えている7つの分野を挙げたが、それだけでも業界が多岐にわたっていて、(ネットワークやデバイスに対する)要件はさまざまだ。こうした要件に応えられるようにアプリケーションを開発していくのは、時間も体力も必要だろう」と述べている。
NB-IoTの浸透は、今後どのくらいで進んでいくのか。これについてキュウ氏は、「全世界でセルラーに接続されるIoTデバイスは、2020年までに30億個に上るとみられている。そのうち70%、つまり21億個がLPWAネットワーク(NB-IoTに限らず)に接続されるようになると考えている」との見解を述べた。
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