“CPU大国への道”を突き進む中国、ドローン分解で見えた懸念:製品分解で探るアジアの新トレンド(13)(3/3 ページ)
しかし、28個ものCPUを搭載することは果たして正しいのだろうか。ドローンには、「モーターを制御する」「物との衝突を避ける」など、“動く物”としての制御用CPUが必要である。図5は、最先端のスマートフォンの1つ、Apple「iPhone7」の全チップ開封で確認したCPUの総数と、DJI製ドローンのCPUの総数を比較した結果である。DJI製ドローンの28個に比べて、iPhone 7は15個。ドローンには、おおよそ2倍の数のCPUが搭載されている。CPU個々の演算性能の総和では、ひょっとするとドローンの方が高いかもしれないほどである(実際には計算済みだが非掲載としたい)。
図5:「iPhone 7」よりも多くのCPUを搭載しているPhantom 4(クリックで拡大)出典:テカナリエレポート
だが、この進化には疑問を持たざるを得ない。この先CPUの数は、28個からさらに増えていくべきなのだろうか。
個々のCPUはプログラムがなければ動かない。電力も必要だ。そしてクロックも、入力のデータも必要になる。それらおのおののネットワークが、ドローンや機器の中を張り巡らされている。まるで、手や足などの各器官にまで脳を持った生物のようだ。28個ものCPUが分散して配置され、それらが個々にプログラムを必要とし、イベントドリブンで動く。これが効率の高い形だとは、とても思えない。
ここ数年、人工知能(AI)や自律走行など、プロセッサやコンピューティングの発展と進化に関わるニュースが増えている。これらの論文や記事を読むと、このように個々に制御する考え方や仕組み、その意義はよく理解できる。
一方で、“各器官”が個々に進化していくのかもしれないというジレンマも感じてしまう。多電圧化し、信号やセンサーと交差して“ねじれ”の構造を生みやすくなっている電源系統、さまざまな周波数で動くデバイスの混在による複雑化するクロック、非同期問題、プロセッサ系の膨大なデータ――。それらが整理され、さらに進化していける新たな構造を生み出す必要がある。「局所進化」ではないドローンやロボットについて考えなければ、むやみにCPUが増えるばかりだ。それを回避しなければならない時は、迫っているのではなかろうか。
“Technology” “analyze” “everything“を組み合わせた造語を会社名とする。あらゆるものを分解してシステム構造やトレンドなどを解説するテカナリエレポートを毎週2レポート発行する。会社メンバーは長年に渡る半導体の開発・設計を経験に持ち、マーケット活動なども豊富。チップの解説から設計コンサルタントまでを行う。
百聞は一見にしかずをモットーに年間300製品を分解、データに基づいた市場理解を推し進めている。
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