Topol氏は、「MWC 2017では、IoT(モノのインターネット)向けの5Gネットワークについては、あまり焦点が当たらないだろう。5G標準規格のIoT機能は、Release 16で採用される見込みだ。Release 16の策定は、5Gの第一波として、携帯電話のスループット向上とさらなる低遅延の実現に向けた基盤を構築するRelease 15の発表から、約1年後になる予定だ」と述べている。
このためMWC 2017では、IoTに関しては、「LTE Cat M」や「NB(Narrow Band)-IoT」など他のLTE規格に集中するとみられる。これらの規格については現在、キャリア各社との間で実地試験が行われているところだ。Topol氏は、「NB-IoTの導入をさらに進めることにより、5G IoT向けのユースケースや、5G IoTの仕様で調整が必要な部分について、確認していかなければならない」と指摘する。
Qualcommも、MWC 2017の自社ブースにおいて、5G機能を中心としたデモを披露するとみられる。同社は2016年末に、5Gモデム「Snapdragon X50」を発表しており、2017年中にはそのサンプル出荷を開始する予定だとしている。100MHz帯域幅のチャンネルを8個と、2×2 MIMOアンテナアレイを搭載し、アダプティブビームフォーミング技術と64 QAMを採用することにより、90dBのリンクバジェットを実現するという。28GHz帯のトランシーバーと、パワーマネジメントICが必要になる。
一方でQualcommはMWC 2017において、4G対応の新製品にも注力するとみられる。同社は2017年2月21日に、一連のRFフロントエンドモジュールを正式に発表した。これにより、同社が現在優勢を維持しているスマートフォン向けベースバンドの対応範囲を拡大できるようになるという。
Qualcommの新製品には、同社にとって初となるGaAs(ガリウムヒ素)技術で製造したパワーアンプの他、各種フロントエンドモジュール、さまざまな種類のディスクリートフィルターなどがある。現在、これらの製品を全てサンプル出荷しているという。部品の製造は、RF360 Holdingsが手掛けている。
新しいマルチモードマルチバンドパワーアンプ(MMPA)4品種は、高周波帯域だけでなく、中/低周波帯域もサポート可能だ。この中の1つである「QPA5461」は、最大31dBmの高出力を備えた高性能ユーザー機器をサポートすることができ、LTEネットワークの通常の対応範囲を2倍に拡大することが可能だ。
新製品には、「Snapdragon 835」向けのアンテナチューニングチップ「QAT35xx」が一式搭載されている。スマートフォンメーカーは、このQAT35xxを使用することにより、メタルケースや600MHz帯をサポート可能になる他、アンテナを素早く切り替えられるようになる。現在、キャリアアグリゲーションに対応する部品の製造を開始していて、近々デバイスも使用できるようになる予定だ。
Strauss氏は、「Qualcommは、新製品の投入により、Skyworks SolutionsやQorvoなどの大手RFチップメーカーの他、RFスイッチを専業とするPeregrineやCavindish Kinetics、アンテナ専業メーカーのSkycrossやEthertronicsなどからもチャンスを奪うことになるだろう」と指摘する。
モバイル分野の専門家によれば、RFフロントエンドチップ市場は、13%の年平均成長率で成長し、2020年までに180億米ドルの規模になると予想されている。
Qualcommは、2020年に登場するハイエンドスマートフォンには、40もの周波数帯に対応するため100個のフィルターが必要になると予測している。2015年は、15の周波数帯に対応するため50個のフィルターが必要だった。
【翻訳:田中留美、編集:EE Times Japan】
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