パラ体の分子群には、ホールが分子内で自由に移動できる「電荷非局在励起種」が生成していた。対して、その他の分子群では、ホールが自由に移動できない「電荷局在励起種」や「中性励起種」しか観測されなかった。これにより、TADFの発光には電荷非局在励起種が関係していることが明らかになった。
今回得られた過渡吸収スペクトルをさらに考察すると、三重項状態から一重項状態への逆変換は、三重項状態の中性励起種が一重項状態の励起種とエネルギー的に近い場合に生じることが分かった。また、一重項状態のエネルギーを三重項状態の中性励起種のエネルギーに近づけるには、分子にパラ体構造を導入して電荷非局在励起種を形成することが有効と判明した。パラ体構造にすることで、一重項状態は電荷局在励起種からより低いエネルギーの電荷非局在励起種となるため、逆変換に必要なエネルギー差が小さくなり、TADFが発光しやすくなる。
産総研と九州大学は今回得た知見をもとに、従来よりも高性能なTADF分子を作製できるという。それにより、有機ELデバイスの大きな低コスト化の他、有機半導体レーザーなどの次世代光デバイスの実現が期待できるとしている。
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