NVIDIAのKeckler氏は、「現在、技術の世代交代が減速している。まだ発展的な進化の余地は残されているが、さらなる性能向上を実現していくためには、材料やデバイスに関する独創的な思考力が必要だ」と述べる。
同氏は、「例えば、設計の簡素化を実現することが可能な、新しい抽象化レイヤーの開発が待ち望まれる。
これまで、System C/C++が強力に推進されてきたが、現在もまだVerilogを使用して開発を手掛けるエンジニアもいる。抽象化レベルを高められれば、生産性の向上やエラーの低減を実現できるようになる」と述べている。
Keckler氏は、「デバイスレベルでは、複数のダイをフォトニクスの技術で接続して1つのシステムを作り出せるような、新技術の開発が求められている。さらに、研究コミュニティーで広がっている重大な問題点としては、汎用システムに対してどの程度まで特殊な機能を採用することができるのかという点が挙げられる。われわれは、この問題をより深く理解することに強い関心を持っている」と述べる。
Chappell氏は、「ERIは、DARPAが1980年代に、マルチプロジェクトウエハー(MPW)を実現するために資金を提供した、『Mosis』プロジェクトと同程度の大きな影響を及ぼすのではないかと期待している。その当時は、垂直統合型モデルの普及により、軍事関連の全ての請負業者が自社工場を保有したいと考えたために、対応不可能な経済状況に陥っていた。Mosisは最終的に、ファブレス設計業界での応用が着地点となった」と述べている。
ERIについては今のところ、小規模ながらも正しい方向に進むための一歩であるとする、称賛の声が上がっている。新たな政府資金から同プロジェクトに割り当てられる金額は、7500万米ドル程度にとどまるという。
ERIは、既存のDARPAプロジェクトと合わせて、最大2億米ドル以上の資金提供を受けるようだ。業界全体で提案を行うことにより、支出が2倍に増大する見込みだという。
Chappell氏は、「われわれは今後24カ月の間に、10〜12個のプログラムを始動させる予定だ。これは、ある年に同分野で実施したプログラム数の2倍に相当する」と述べる。
この他にも、ディープニューラルネットワークの限界について調査するプロジェクトなども含まれる。特に、同分野における学習や、収集したデータをベースとするオンザフライでのネットワーク修正に向けた、ハードウェアの実現を追求していくという。
また別のプロジェクトでは、ナノワットクラスのセンサーに関する研究を行う予定だ。また、CadenceとNVIDIA、University of California at Berkeley(カリフォルニア大学バークレー校)の研究者たちは、より高いレベルの設計抽象化を追求していくための開発チームを結成している。
【翻訳:田中留美、編集:EE Times Japan】
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