ネガティブな面ばかりがフォーカスされる「非正規雇用」ですが、実際はどうなのでしょうか。今回は、「バーチャル株式会社エバタ」を作り、非正規雇用が会社にもたらす効果をシミュレーションしてみました。さらに、非正規雇用に起因する社会的問題が、なぜ看過できないものなのか、そこに存在する深い闇をまとめていきたいと思います。
「一億総活躍社会の実現に向けた最大のチャレンジ」として政府が進めようとしている「働き方改革」。しかし、第一線で働く現役世代にとっては、違和感や矛盾、意見が山ほどあるテーマではないでしょうか。今回は、なかなか本音では語りにくいこのテーマを、いつものごとく、計算とシミュレーションを使い倒して検証します。⇒連載バックナンバーはこちらから
15年ほど前、私が、米国コロラド州にあるIT企業に出向していた時のことです。その会社では、2人1組で仕事を行うパートナー制を採用しており、私はインド人女性とペアを組むことになりました。そもそも、多国籍のメンバーからなるチームですので、このようなペアは別段珍しいことではありませんでした。
私たちのペアは、あるミドルウェアの開発を命じられており、チームリーダーから、その開発に要するスケジュール表の提出を要求されていました。
私は、日本での製品開発の経験から ―― 新技術の困難性、開発環境の構築、試作に要する日数、仮実装、検証、単体から結合に至るテストや、開発の出戻りまでを含めて ―― 合計153日と算出しました*)。
*)当時としては、あまり一般的ではなかった、動的リンクライブラリや、ライブラリのテンプレートの作成で『かなり難しい』と踏んでいました。
一方、私のパートナーであるインド人の女性は、設計1日、実装1日、テスト1日で、合計3日と算出してきました。
彼女が出してきた線表を見て、私は目が点となり、言葉を失いました。『プログラムを1行でも書いたことがある人間であれば、このようなスケジュールを組めるはずがない』からです。
私はすぐさま、チームリーダーのパーティションに駆け込んで、「私を、素人(しろうと)と組ませて、開発を失敗させたいんですか!」と抗議しました。
チームリーダーは、私の話の全てを聞くと「トム(Tom:チーム内での名称)、君の言うことは分かった。きちんと対応する」と、明言してくれましたが、私は不安でした。
しかし、その2日後、私は、パートナーの彼女が、即日解雇されていたことを知らされることになります。
「きちんと対応する」の内容が、極端すぎるだろう ――。
私の抗議の後で、リーダー自身も再調査を行い、私の証言の裏を取ったのだと思いますが ―― それでも、(プログラマーとしての)再教育、研修、または担当の転換(例えば、スケジュール進捗管理係など)、別部署への移動、子会社出向など代替案が一切なしの、問答無用のバッサリ解雇。
『今、私は、本当に恐しい国(米国)で働いているんだ』ということを、腹の底から理解した瞬間でもありました。
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