NokiaとそのライバルであるEricssonは、さまざまな変化が進む中、5Gに必要とされるビームフォーミングアンテナアレイを動作可能な、これまでにないカスタムシリコンの開発に取り組んでいく予定だとしている。両社とも、現場のアンテナ上で動作する必要がないネットワーク機能に関しては、その多くをx86サーバ上のソフトウェアで動作させているという。例としては、機械学習(マシンラーニング)をテレコムに適用するといった取り組みなどが挙げられるという。
EricssonのCTOを務めるErik Ekkuden氏は、MWC Americasの会場でインタビューに応じ、「ARMプロセッサやGPU、各種アクセラレータなどの評価を行っているが、最初のうちは全てx86を採用しているのが実情だ」と述べている。
Verizonは、Nokia Bell Labs(ベル研究所)が開発した5G基地局の試作版を披露した。28GHz帯を使用することにより、家庭向けにGビット/秒クラスのインターネットアクセスを提供することが可能だ。消費者が小売店で装置を購入し、それを自分で設置できるようにしていきたい考えだという。
ただし、課題は、最長で500m離れた場所にある5G基地局からの256QAM信号が、家屋の複数層の窓ガラスを通過することができないという点だ。このためNokiaは、2台セットのコンシューマモデムを開発し、実証実験においてVerizonの目標を大きく上回る1.5Gビット/秒の通信速度を実現できたという。
まずは受信機(下の写真)を、窓の外側に設置する。28GHz帯の信号をWi-Fi帯域に近い周波数にダウンコンバートし、窓を通して屋内のモデムに送信する仕組みだ。受信機と部屋中にある基地局は、磁石を使って自動的に位置合わせを行うという。
AT&Tは5Gに関して、固定無線アクセス向けに同様のコンセプトの試験を行っている。AT&T、Verizonともに、2018年末までにはサービスの提供を開始できる見込みだとしている。
5Gの規格策定が進む中、通信機器ベンダー各社は現在、通信事業者向けにテストシステムを提供しているという。例としては、大規模なFPGAを3個搭載したQualcommのサーバ用CPUなどが挙げられる。
Ericssonが披露したミリ波システムは、1つのアレイに最大512個のアンテナ素子を搭載し、それら全てでビームフォーミングをサポート可能だという。同社のEkkuden氏は、「CMOS以外のプロセスでも製造できる」としながらも、詳細は明かさず、Ericssonの取り組みについては「60以上の5G関連の実証実験を手掛けている。そのうち約半数は米国内で実施している」と述べるにとどまった。
AT&TのJared Peterson氏は、パートナー企業であるRM2が、現在注目を集めているアセットトラッキング(資産追跡)の分野向けに開発した製品の中の1つとして、ネットワークにつながるスチールパレットを発表した。AT&Tは、「当社の新しいLTE-Mネットワークが実現すれば、このようなスマートシステムの電池寿命を5〜10年間に延ばせるようになるだろう。さらに、7.5米ドルという低価格のモジュールを開発し、1カ月当たり1.5米ドルのデータプランも提供できる見込みだ」と述べた。
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