富士通研究所は、小型の5G基地局で10Gビット/秒(bps)を上回る高速通信を、約10Wの消費電力で実現することが可能となるミリ波回路技術を開発した。
富士通研究所は2017年10月、小型の第5世代移動通信方式(5G)基地局の消費電力を低減できるミリ波回路技術を開発したと発表した。10Gビット/秒(bps)を上回る高速通信を約10Wの消費電力で実現することが可能となる。
富士通研究所は、多数のアンテナ素子を用いて必要な方向に電波を出力させるビームフォーミング技術において、これまでサブアレイ間符号化技術などを開発してきた。この技術は電波干渉を低減するように信号を符号化することで、高速通信と低消費電力の両立を実現することができる。しかし、駅前やスタジアムなど多数の基地局を設置するような場所では、消費電力のさらなる削減が求められており、Wi-Fiアクセスポイント並みに抑える必要があるという。
そこで同社は今回、アンテナ素子へ入力する信号の位相を制御するフェーズシフター回路に用いるアンプ数を削減しつつ、回路の電力損失を抑えることができる新しいミリ波回路を開発した。これにより、フェーズシフター部分の消費電力を半減することに成功したという。
従来はフェーズシフターごとに4個のアンプを必要としていた。これに対して今回は、入力信号の±符号で出力位相を0度と180度に切り替え、また90度と270度に切り替えることができるスイッチ回路を新たに開発した。これによってアンプ数を2個に減らすことができたという。
さらに、ビーム間の干渉を低減するため、フェーズシフターに設定された位相と振幅を測定し、ずれを補正する機能を搭載した。これによって、消費電力の低減とビーム方向の高精度な制御を実現している。
今回開発した技術を用いて作製した128個のアンテナ素子は、フェーズシフター部の消費電力が3Wとなり、従来に比べて半減した。さらに、サブアレイ間符号化技術などを組み合わせることで、10Gbpsの通信環境でも約10Wの消費電力で実現することが可能となった。
富士通研究所は今後、スモールセル向け基地局の実用化に向けた装置開発と実証実験を行う。製品化は2020年ごろをめどに富士通が行う予定である。
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