そしてデータの書き換えに必要な電圧は、スタックBが高く、スタックAが低い。書き換え電圧パルスの幅を50nsとしたときに、スタックAの書き換え電圧(任意単位)を26とすると、スタックBの書き換え電圧(任意単位)は37となり、約1.4倍ほどの開きがある。
また書き換え電圧のパルス幅が長くなると書き換えに必要な電圧は低く、書き換え電圧のパルス幅が短くなると書き換えに必要な電圧は高くなる傾向がある。特にパルス幅が20ナノ秒〜25ナノ秒よりも短くなると、書き換え電圧の上昇傾向が強まる。
スタックAとスタックBにおける書き換え電圧の違いと、書き換え電圧パルスの長短による書き換え電圧の変化。右上のグラフは、1MビットのスタックAとスタックBにおける不良セルの数(縦軸)と書き換え電圧(横軸)の関係。左下のグラフは、1MビットのスタックAにおける書き換え電圧パルス幅(横軸)と書き換え強さ(任意単位)の関係。出典:GLOBALFOUNDRIES(クリックで拡大)さらに、磁化反転の方向によっても書き込み電圧の高さが変わる。試作したMTJスタックによる測定では、MTJを反平行(AP)状態から平行(P)状態に磁化反転させる電圧は低く、平行(P)状態から反平行(AP)状態に磁化反転させる電圧は高い。相対的には反平行状態の方が、MTJの磁気状態は不安定であることが分かる。
磁気トンネル接合(MTJ)スタックのデータ書き換え電圧(シュムープロット)。書き換え電圧のパルス幅は50ナノ秒、電圧の単位は任意。プロットの横軸は反平行(AP)状態から平行(P)状態に書き換える電圧、プロットの縦軸は平行(P)状態から反平行(AP)状態に書き換える電圧。グラフ中で赤色の部分が書き込み不良が発生している範囲、濃い青色の部分が書き込み不良がゼロの範囲を示す。出典:GLOBALFOUNDRIES(クリックで拡大)(次回に続く)
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