第16回大会は2018年9月4〜8日にかけて開催され、会場は静岡県袋井市のエコパ(小笠山総合運動公園)だ。参加申し込みチームはICVクラス109チーム、EVクラス29チームの合計138チームとなるが、事前の書類選考などにより98チームを上限として大会出場チームを最終決定する。
第16回大会におけるEVクラスのトピックとしては、中国で2017年に開催されたFormula Student ChinaのEVクラス上位校が4校参戦すること、群馬大学と三重大学が初参加すること、豊橋科学技術大学がICVクラスからEVクラスに転換したことを紹介した。
神奈川大学の学生フォーミュラプロジェクト「KURAFT」は、2013年のチーム設立当初からEVクラスの参戦を続けている。しかし、これまでの道のりは決して簡単なものではなく、第12回大会(2014年)は車両未完成、第13回大会(2015年)は車両完成が間に合うも車検不通過、第14回大会(2016年)も電装系のデバッグが遅れ車両未完成という結果が続いた。
第15回大会(2017年)は確実な車検通過を目指し、マシンの新規開発ではなく前年マシンを改良する方針を固めた。この選択が功を奏し、初の全競技参加を成し遂げる。同プロジェクトでリーダーを務める田村健昇さんは、「2017年は全競技に参加できたが、エンデュアランス(動的審査の1つで周回路を20km走行する)で途中リタイアし、悔しい思いもした。2018年はエンデュアランスも走破し、チーム過去最高位を狙う」と語る。
この目標を実現するにあたり、2018年シーズンの車両開発では“選択と集中”の戦略を立てた。これまで左右のサイドポンツーンに分散していた駆動用バッテリー搭載位置を、ドライバー後部に集約することを「重要開発項目」として定め、開発リソースを傾けた。これにより、大幅な車体重量減(前年比−72.5kg)と、ヨー慣性モーメントの低減(前年比−26%)を達成したという。
同プロジェクトのパワートレインは、「いわゆる低電圧大電流で構成している」(田村さん)。Motenergy製永久磁石モーター1基による後輪駆動を採用し、バッテリーは「日産自動車LEAFに搭載されたバッテリーと同等品」とする。将来的には、高電圧高電流に対応したパワートレインへ刷新することを目指したいと語った。
車両開発で最も困難なこととして、田村さんは知識と機材の不足を挙げた。車検通過と全競技完走には車両に高い信頼性が求められるが、信頼性を確保するためのデバッグ作業に大きく時間がとられているという。「信号ラインへのノイズ混入が原因と思われる不具合が発生したが、現時点の私たちの知識と機材では診断や発生場所の特定ができない。この時のデバッグ作業では、配線を上流から取り外してチェックした。長い時には2カ月も作業を行っている」とし、「もしかしたらこの問題を素早く解決する知識や機器があるかもしれないが、その存在があるかどうかも分からない」と課題を口にした。
「今シーズンも大会まで残り2カ月。最後までしっかりと走り抜くことができれば」と田村さんは決意を語る。同プロジェクトはEVクラスでトップ3、総合40位以内に入ることを目指す。
1年間の参戦準備を通じて、学生はビジネスとしての自動車開発に必要な知識と、厳しくも楽しいモノづくりの経験を習得する。大会本番では何を得ることができるのだろうか。EE Times Japanでは、EVチームの動向を主に大会本番の様子をお伝えする予定だ。
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