アドバンテックは、MIRAIと「IoT×植物工場プロジェクト」の共創を始めると2018年1月に発表した。IoT×農業をテーマに、新たな農業の形を実現していくのが狙いだ。今回のフォーラムでは、「植物工場事業の世界展開」と題して、MIRAIの社長を務める野澤永光氏が、今後の取り組みなどについて講演した。
MIRAIは、植物工場における野菜の生産と販売だけでなく、栽培システムの開発から販売、栽培方法の技術支援まで、植物生育に関連する幅広い事業をグローバルに手掛けている。本社は千葉県柏市に置き、生産・販売拠点は本社内と宮城県多賀城市にある。
同社が出荷する野菜の量は1日当たり、レタス類が1300〜1600kg、バジルが60〜70kgと多い。このことは、試験的に栽培する研究室ではなく、事業として大量生産・供給を目的とした工場であることを意味する。この事業規模を拡大するため、自社の2工場に加え、同業他社からも野菜などを仕入れて販売している。2018年8月現在で取引先は50社に達するという。
垂直方向を利用できる都市型農場は、土地を有効活用ができるのが特長だ。従来農業に比べて単位面積当たり、50〜100倍の収穫量になるという。野菜に供給する水も循環式で再利用できるため、環境にも優しい。
一方で課題もある。野澤氏は、「野菜を収穫・出荷した後、6日が経過しても品質を保たなければならない。植物工場は環境変化に強いと思われているが、必ずしもそうではない。外気温の影響を受けて水温が設定値より上昇することもある。この結果、鮮度が早く劣化することもある。これらを前提に内部環境を制御し、最適化する必要がある」と話す。種には個体差があり、これを見分けて育成することも重要だという。
野澤氏によれば、野菜の栽培に関して「約200の管理すべき項目がある」という。その項目とは、照明や温度、湿度、CO2、養液、水流、空調、栽培密度などである。これらを管理するために膨大な数のセンサーを取り付けると、オーバースペックでコスト高となる。
そこで今回、アドバンテックとの共創で植物工場に適切なシステムを作り上げていくことにした。エッジインテリジェンスサーバ(EIS)など、アドバンテック製のプラットフォームを活用する。グローバル市場に対応するハードウェアやGUIなどをサポートしているのもアドバンテックの強みだ。
その上で、MIRAIがこれまで収集してきた野菜の栽培に関連する膨大なデータなども駆使して、育成に最適な条件などを分析。データの可視化などを行うことで、外部環境の変化にも順応できるシステムを開発する。
MIRAIは現在、国内で合計9カ所の植物工場に携わっている。海外でも、ロシアや中国、モンゴル、香港など合計7カ所の植物工場に携わる。「日本企業で植物工場の海外展開をしているのはMIRAIだけ」(野澤氏)と主張する。さらに、「海外ユーザーからは、設備の導入だけでなく栽培のマニュアルも教えてほしいとの要望が多い。将来は、ターンキーに近いシステムを提供できるようにしたい」と話す。
野澤氏はMIRAIの使命として、「国や地域、栽培環境に影響されずに、安定した野菜生産ができる事業を、世界中に広げていきたい」と語った。
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