本シリーズの第7回で述べたマルチペア薄膜の形成工程と、第10回で述べたメモリスルーホールの形成工程はいずれも、セルトランジスタのストリングを製造する準備段階に相当する。マルチペア薄膜は、制御ゲート膜と素子分離膜(隣接するセルトランジスタを電気的に分離する膜)である。メモリスルーホールは、セルストリング全てのチャンネルとゲート絶縁膜を一気に形成するために、必要な細長い孔である。
メモリスルーホールの側壁にはまず、ゲート絶縁膜を形成する。3層構造あるいは2層構造の絶縁膜を細くて深い孔の側壁に、均一に成膜しなければならない。非常に難しい技術である。そしてメモリスルーホールの細くて深い孔を多結晶シリコンによって埋め込む。これも同様に、非常に難しい技術である。いずれも非常に難しい技術なのだが、数多くのセルトランジスタを一気に作れるという、大きなメリットがある。上手く作れさえすれば、スループットを大幅に高められる。
3D NANDフラッシュメモリの断面構造図と、「メモリセルの形成(Cell Formation)」部分(橙色の実線で囲んだ部分、上方は拡大図)。出典:Applied Materials(クリックで拡大)
「メモリセルの形成(Cell Formation)」技術における課題と解決策のまとめ。左の図はセルストリングの一部を拡大したもの。緑色の板が制御ゲート、紫色の円筒がシリコン酸化膜、水色の円筒がシリコン窒化膜(電荷捕獲層)、橙色の円筒が多結晶シリコンのチャンネル、赤色の柱がコアフィラー。出典:Applied Materials(クリックで拡大)(次回へ続く)
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