では再び、「ひきこもり」の話に戻ります。
このような「就職氷河期」だけが「ひきこもり」を産み出したと考えるのは早計です。調べてみたところ、「ひきこもり」の発生原因は、いまだに分かっていないのです。
個人の性格や能力に因るもの(上記(1))である、とか、不登校からの連続性(上記(2))など、各種の論が唱えられていますが、私は、上記(3)(4)の説を支持しています ―― というのは、私がとても共感できる説だからです。
個人的な話になるのですが、私は、社会人の10日間近くに及ぶ長期休暇とか、学生たちの40日近くに及ぶ夏季休暇の廃止を主張する者の一人です。理由は簡単。「11日目の出社が死ぬほど憂鬱だから」です*)。
*)長期休暇後の出社/登校が楽しみでたまらないという人。私はあなたが嫌いです。
もし、このような長期休暇が「ひきこもり」のきっかけになっていると言われれば、私は強く賛同します。実際、一日休暇を延せば、その次の日がさらに辛くなることは、行動経済学的にも論証されていますし、私も以前シミュレーションでその事実を示しました(関連記事:「未来を占う人工知能 〜人類が生み出した至宝の測定ツール」)。
一方で、このような議論には意味がないという考え方もあるようです。「ひきこもり」は、現時点では原因が特定できておらず、いつでも、誰にでも罹患するインフルエンザのようなものだからです。
インフルエンザに罹患した後、その原因を探るのは ―― 意味がないとは言いませんが ―― 罹患した人個人にとっては、あまり有益なことではないでしょう。むしろインフルエンザの早期治療、健康の回復の方が、はるかに重要です。
一方、「ひきこもり」の理由を理解することには意義がありそうです。現時点では「病気」と「逃亡」が有力な説です。
上記の(1)の病気については、これはどうしようもありません。基本的には「病気」は、治癒するしかありません。上記(2)の「自己からの逃亡」についても、同様に、本人以外ではどうしもようないことです。「逃亡」は、人間の自己の生存本能に基づいてDNAレベルで組み込まれている、基本スペックであるからです。
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