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» 2018年12月28日 10時30分 公開

政府の地雷? 「若者人材育成」から読み解くひきこもり問題世界を「数字」で回してみよう(54) 働き方改革(13)(6/10 ページ)

[江端智一,EE Times Japan]

「ひきこもり」にネガティブなイメージがついたのは、なぜか

 ロジックの是非はさておき、まずは「ひきこもり」の歴史を調べてみました。

 諸説ありますが、「ひきこもり」が最初に使われたのは1970年代という説があります。これは、当時発生した、非行、校内暴力事件に端を発し、その暴力に耐え切れなくなった子どもたちが、登校することができなくなったことを指していました。まだ「いじめ」という言葉はなかったようですが、同じものです。

 その当時は「ひきこもり」とは言わず「不登校」という呼び名で取り扱われており、その救済レベルも、民間のフリースクールなど(あの有名な「戸塚ヨットスクール」も含む)でした。

 大きな転機を迎えたのは、2000年ごろに連続で発生した3つの殺人および監禁事件です。これらの事件の犯人が全員「ひきこもり」状態だったことから、「ひきこもり」という言葉は、「犯罪リスク」を伴うというイメージで世間にデビューすることになり、政府が10代20代における「ひきこもり」の調査に乗り出すことになります。

 ところが、この「ひきこもり」は、実はもう一つのルートでも動き始めていました。それが、その当時「自由な働き方」としてもてはやされた「フリーター」という労働形態です。これは「バブル景気」という背景のもと、大々的に拡大しました。

 当然ですが、その当時、バブル崩壊→経済危機→転職困難→スキル問題、という流れを予想できた人は、日本には一人もいなかったのです。

 さらに、ここに、バブル崩壊から始まった「就職氷河期(第1期)」が襲い掛かります。大手企業は新卒採用の枠を減縮する(または、採用をゼロにする)などして、学校を卒業予定の若者たちを就職市場から締め出しました。こうして、以前のポジティブな「フリーター」ではなく、ネガティブな「フリーター」が大量生産されることになったのです。

 当然ですが、これは「就職浪人」という形の若者を量産することになりました。しかし、我が国が「浪人」と名の付く者に対して、恐ろしく冷酷な取り扱いをすることは、昨今の医学部入学差別事件を見ても明らかです。

 こうして、「スキル問題」を抱えたままの若者は、今40歳近くになり、前述したような、スキル問題の負の連鎖を続けている人口は、一説には40万人いるといわれています。

 しかし、この悲劇はこれだけでは終わりませんでした。

 2008年のリーマンショックで、再び、「就職氷河期(第2期)」が始まり、同じような「スキル問題」を抱えた若者が量産されることになりました。

 この2つの氷河期を経て、私たちは、「経済成長」というものが、本当に失くなったことを思い知りました。そして、「経済成長」を前提とする経済戦略では、もう対応できないと認め、それが、今回の「働き方改革」の"若者"編に反映されたと考えられます。

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