ところで、本連載のタイトルは「製品分解で探るアジアの新トレンド」である。上記のApple Watch Series 4は、アジアの製品ではないので、今回の本題はここからである。
図3は、日本では未発売のHuawei製スマートフォンである。型名は伏せるが最新機種だ。内部には基板や電池が搭載されているが、図に掲載したのは、若干ぼかした基板と指紋認証用チップ、タッチスクリーンコントローラー用チップのパッケージである。
指紋認証チップ、タッチコントローラーともに、採用実績の非常に多い中国半導体メーカーのチップが使われている。基板には通信、プロセッサ、センサーが並び、前後に2基のカメラが備わっている。
中国メーカーは続々とスマートフォンを出してくるので全製品をチェックすることは到底出来ないが、弊社ではかなり網羅的に中国スマートフォンを分解しているので、チップの機能分布やチップ開発メーカーの国籍などの状況は、常時BOM表にまとめて明確化している。
先にApple Watch Series 4で述べたように、基板からチップを一つ一つ取り外し、チップを開封して観察するという手法は中国スマートフォンも同じ。ほぼ全チップを開封する。
図4は、このスマートフォンに搭載されている(詳細は有料)、ある機能のチップ上文字を高倍率の顕微鏡で観察した一部である。多くのチップにHuaweiの社名が配線層で搭載され、年号が2017年となっている……!! 2017年にHuawei自身の手によって開発されたチップが、2019年のHuawei製スマートフォンに採用されているのだ。
Huaweiは、HiSiliconという半導体専業メーカーを傘下に持っている。当然、Huaweiのスマートフォンには多くのHiSiliconチップが使われていることも弊社では確認している。しかし、同様に多くの「HUAWEI」社名入りチップも採用されているのである。
しかも、これらのチップは、従来HiSiliconが手掛けていない分野の半導体であった。
なお、この件について本連載ではこれ以上の情報をお伝えすることはできない*)のだが、一つお伝えしたいのは、チップというのは“開封しないと分からないことばかり”という点だ。
お問い合わせをいただいても回答が難しく、あらかじめご了承いただければと思います。
実際に開封して、骨の折れる作業をこなしてこそ、明らかになることが多数ある。外観だけで判断していては、上記の事実は絶対に分からなかっただろう。
米中の貿易摩擦問題が現時点(2019年6月中旬)で終息しそうにない今、中国半導体の進化は、むしろ進むだろうと予想される。今後も注力してチップ開封を行い、事実ベースで判断していくことがますます重要になっていくだろう。
今後も、日本未発売の機種も含めて、できる限り観察していく予定だ。
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