今回、両社は、マイクロ化学技研のマイクロ化学チップ設計技術に、パナソニックの「ガラスモールド技術」を組み合わせたことで、ガラス製のチップを低コストかつ量産可能にしたという。
ガラスモールド技術は、ガラス素材を約600℃、500kgfの高温高圧でプレスして型形状をガラスに精密転写する技術で、パナソニックは約40年前から、主にカメラ用の「非球面レンズ」量産を目的に研究してきた。同社は、高温高圧に耐えるための超硬合金を精密に加工する「型加工技術」、ガラスが型から問題なくはがれるようコーティングする「離型膜技術」、そして冷却などの際にレンズが割れないようにする「成形技術」の3つのコア技術を確立しており、今回のマイクロ化学チップ製造への展開にあたっても、これらの独自技術を適用して実現させたという。
具体的には、まず金型加工にあたっては、超硬合金上に、放電加工によって粗い状態で数十〜数百マイクロメートルの構造を形成した後、「独自の刃物と加工条件」によってサブマイクロ精度で加工。さらに手磨きなどの熟練の技術によって表面を鏡面化して仕上げている。
ガラス素材へのマイクロ流路成形では、空気を挟むことによる転写不良や、金型とガラスの熱膨張率の差によってガラスが割れてしまうなどの課題があったが、温度や圧力などの成形条件や独自の離形膜、離型剤を用いることで解決したという。
さらに、通常1つの金型を用いて予熱、プレス、冷却の工程を行うと30〜60分程度必要となっていたが、各工程を分割し複数の金型が移動しながら成型する形式をとることによって量産性を確保している。
こうして両社は、最大で直径50mmまでのチップを高精度で製作、月産数万枚までの量産対応が可能となったという。従来のガラスエッチング工法と比較すると約10分の1の低コスト化および、約10倍の高精度化を実現しており、「ガラス製マイクロ化学チップのディスポーザブル使用が可能になる。高精度化の実現で機器やシステムのパーツとしての組み込みを容易にする」としている。
具体的なターゲット分野はバイオ、医療、化学制約プラント、環境分析としている。例えば水処理インフラ向け化学量計測対応のIoT端末や、単一細胞タンパク質解析チップなどとしての展開を想定しているといい、2020年度から量産の対応をしていく予定だ。コストについては現在数千円〜数万円までに抑えることに成功しているが、「将来的には1000円まで抑えられるよう目指していきたい」としている。
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