Jones氏は、Big Fundを「中国の自信を育む上で重要な要素」と考えている。同氏は、中国がエレクトロニクスや半導体の数々の重要な領域において米国から独立できるという自信をますます強めていると指摘した。同氏は「Big Fundなくしては、そのような自信は存在しなかっただろう」と述べた。
Jones氏の見解によると、中国国内の半導体業界の基盤という観点では、同国の主要なファウンドリーであるSMIC(Semiconductor Manufacturing International Corporation)が着実に発展しつつあるという。同氏は「SMICは14nmプロセスで製品を製造し始めている」と述べた。TSMCは既に7nmプロセスで量産を始めているが、Jones氏は「14nmでは依然として大規模なファウンドリー市場があり、2030年以降も持続するとみられる」と述べ、SMICがプレイヤーとなる可能性を主張した。
中国の他の業界観測筋は、Big Fundは半導体業界にとっては良いが、中国の多くのファブレス企業にとってはそうではないと考えている。北京に拠点を置くEDAツール関連企業であるHuada Empyrean SoftwareでCTO(最高技術責任者)を務めるSteve Yang氏は、2017年、EE Timesに対し「ほとんどのファブレス企業はBig Fundを受け入れる準備ができていない。中国企業はまず、資金を活用するための“筋肉”をいくらか大きくする必要がある」と述べた。つまり、大半の中国企業は「資金を効果的に使えるほど成熟しきっていない」というのが同氏の見解だ。
しかしながら、中国の設計コミュニティーは専門知識や技術の点で進歩しつつある。Jones氏は「中国の製品設計能力は過去数年間で大幅に向上した。HiSiliconは突出しているし、VeriSiliconはBig Fundから資金を得て、7nmではTSMC、8nmではSamsung Electronicsと共同でチップを設計している」と述べた。
EE Timesは、VeriSiliconがひそかにデザインウィンを蓄積していることを独自に突き止めた。同社のIP(Intellectual Property)コアは、Google、Facebook、Amazonが開発中のチップに組み込まれている。
Jones氏によれば、ZTEとUnisocも、7nmプロセスでチップを設計しているという。
何より、中国の半導体設計が勢いづいている背景には、AI(人工知能)市場を切望する中国のファブレス企業の顧客とともに、AIプロセッサ/AIアクセラレーターに対する需要の急速な成長がある。Jones氏は、「中国のIPは、過去5年間で大幅に強化された」と述べ、その一例としてCambriconのニューラルネットワークプロセッサを挙げた。
一方、英GraphcoreのCEOであるNigel Toon氏は、深センでのインタビューでEE Timesに対し、「中国では、約70社がAIチップを設計しようとしていると聞いた」と述べる。同氏は「ただし、問題は、あまりに多くのプレイヤーが似たようなアーキテクチャに基づいた製品を、似たようなアプリケーション向けに開発しているので、市場が“混雑”しているという点だ」と付け加えた。
【翻訳:青山麻由子、田中留美、編集:EE Times Japan】
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