超薄型有機太陽電池の寿命15倍&高効率化を実現:理化学研究所(2/2 ページ)
この性能を実現したポイントは、高エネルギー交換効率と熱安定性を併せ持つ新しい発電層の設計と、ポストアニール処理(電子素子を作製した後に行う加熱処理)による熱安定化技術の2つ。具体的には、以下の通りだ。
新しく開発した発電層では、ドナー材料として東レが近年新たに開発した熱安定性に優れる半導体ポリマー「PBDTTT-OFT」を利用。従来はこのPBDTTT-OFTとランダムに混合したバルクヘテロ接合構造の発電層を作製するために、アクセプター材料としてフラーレン誘導体を利用していたが、今回代わりに非フラーレン誘導体の「IEICO-4F」を用いたことで、光捕集性と熱安定性により優れる発電層の作製に成功したという。
これに加え、素子作製後に簡単な熱処理を行うポストアニール処理(今回は作製した有機太陽電池を窒素雰囲気下で150℃のホットプレート上に5分間置くという処理を実施)によって、長期保管安定性の改善も実現したとしている。
高いエネルギー交換効率と長期保管安定性を両立するための設計指針(クリックで拡大) 出典:理化学研究所
この長期保管安定性改善の原理については、同グループが微小角入射広角X線散乱法やX線光電子分光法などによる物性評価を行った結果、ポストアニール処理を施すことにより、発電層と正孔輸送層の界面での電荷輸送が改善した結果ということが判明。また、他の発電層材料や正孔輸送層を試したところ、ポストアニール処理後にエネルギー変換効率が低下してしまったといい、「今回の素子構成でのみ高いエネルギー変換効率が保持されることが判明した」という。
- 次世代太陽電池市場、2030年に4563億円規模へ
富士経済は、ペロブスカイト(PSC)や色素増感(DSC)、有機薄膜(OPV)、ガリウムヒ素(GaAs)といった次世代太陽電池の世界市場を調査し、その結果を発表した。
- 世界初、「完全固体型」色素増感太陽電池を発売へ
リコーは、「第19回国際ナノテクノロジー総合展・技術会議」(2020年1月29〜31日/東京ビッグサイト)で、電解液を固体材料のみで構成した完全固体型色素増感太陽電池モジュール「RICOH EH DSSC シリーズ」を公開した。2020年2月下旬から順次販売を開始する予定で、同社によると完全固体型の色素増感太陽電池モジュールを発売するのは「世界初」だ。
- 東京理科大、波動性示す有機半導体pn接合を実証
東京理科大学らの研究グループは、有機半導体エピタキシー技術を用いて作製した有機半導体pn接合において、電子と正孔の両方が「波動」性を示すことを実証した。
- 長期間、皮膚に貼り付けて心電計測が可能に
理化学研究所(理研)は、極めて薄い有機太陽電池で駆動する「皮膚貼り付け型の心電計測デバイス」を開発した。
- 理研と東レ、衣服に貼り付けられる有機太陽電池を開発
理化学研究所(理研)と東レは2018年4月17日、高い耐熱性と変換効率を兼ね備えた超薄型有機太陽電池の開発に成功したと発表した。e-テキスタイルへの応用や、車載やウェアラブル機器の電源として活用が期待できるという。
- 洗濯可能な薄型有機太陽電池、理研らが開発
洗濯が可能な超薄型有機太陽電池を理化学研究所(理研)の福田憲二郎研究員らが開発した。伸縮性と耐水性にも優れており、衣服貼り付け型電源として利用することが可能となる。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.