理化学研究所(理研)は、極めて薄い有機太陽電池で駆動する「皮膚貼り付け型の心電計測デバイス」を開発した。
理化学研究所(理研)は2018年9月、極めて薄い有機太陽電池で駆動する「皮膚貼り付け型の心電計測デバイス」を開発したと発表した。生体信号を長時間連続してモニターできる自立駆動型ウェアラブルセンサーを実現するための基盤技術となる。
今回の研究は、理研創発物性科学研究センター創発ソフトシステム研究チームの福田憲二郎専任研究員や染谷隆夫チームリーダー(東京大学大学院工学系研究科教授)、創発機能高分子研究チームの礴馬敬介チームリーダーらが共同で行った。
研究グループはまず、皮膚や布地に貼り付けることができるフレキシブル有機太陽電池の開発を行った。特に、太陽電池のエネルギー変換効率を改善するため、ナノスケールの凹凸パターン「ナノグレーティング構造」を極めて薄い基板上に形成する技術を確立した。
試作した太陽電池は、厚み1μmの基板上に「透明電極」や「電子輸送層」「半導体ポリマー層」「正孔注入層/上部電極」を積層した構造である。今回は「電子輸送層」と「半導体ポリマー層」の両方に、厚みが数十nm、周期約700nmのナノパターンを形成した。この構造を採用することによって、太陽電池表面での光の反射を低減させることができる。しかも、薄膜内部で光散乱が増強されると同時に、金属電極での表面プラズモン共鳴効果によって、入射光を効率よく発電に利用することが可能だという。
この結果、試作品のエネルギー変換効率は10.5%を達成した。これまでのフレキシブル有機太陽電池の効率は10%であり、これまでの最高値を更新した。
次に、開発した超薄型有機太陽電池と、これとは別に共同研究グループで開発している皮膚貼り付け型の超薄型センサーを組み合わせて集積化した。試作した「皮膚貼り付け型心電計測デバイス」を、人体に貼り付けて心電波形を計測したところ、外部電源なしで心電計測デバイスを駆動させることができた。しかも、信号対雑音比は25.9dBという高い精度で信号を取得することに成功したという。
開発した超薄型有機太陽電池で駆動する皮膚貼り付け型心電計測デバイスをさらに発展させることで、人体への負荷を気にすることなく、心電や心拍など生体情報の計測が可能になるという。さらに、取得した生体情報を処理する回路や無線伝送システムとの統合なども視野に入れている。
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