バリスタを構造別に分類すると、主に円板型(ディスク型)と積層チップ型に分かれる。円板型はリード付きの挿入部品、積層チップ型はリードレスの表面実装部品である。積層チップ型のバリスタを「積層チップバリスタ」と呼ぶ。
積層チップバリスタは主にモバイル機器に搭載されており、機器の製造工程で発生する静電気放電(ESD)から電子回路を保護する目的で使われる。スマートフォンやウェアラブルデバイスなどのモバイル機器では、実装密度を高めようとする要求が強い。このため、ほかのチップ部品と同様に積層チップバリスタも小型化が進んでいる。現在の主流は0603(長さ0.6mm×幅0.3mm)サイズと0402(長さ0.4mm×幅0.2mm)サイズである。
車載用や産業用、家電用の積層チップバリスタに対する小型化要求は、モバイル機器に比べると弱い。それでも1608(長さ1.6mm×幅0.8mm)サイズから1005(長さ1.0mm×幅0.5mm)サイズへの置き換えが進んでいる。
小型化とともに重要な製品動向に、車載対応がある。1つは車載ネットワークへの搭載だ。ESD対策だけでなく、車載イミュニティ試験への対応を目的として積層チップバリスタが採用され始めている。車載イーサネットなどの通信速度が高いネットワークでは、通信波形に影響を与えにくい静電容量が小さなバリスタが求められる。
もう1つは、車載用電子部品規格「AEC-Q200」への準拠である。使用温度範囲がマイナス40℃〜プラス125℃の「グレード1(Grade 1)」に対応した積層チップバリスタが登場している。大きさは1608サイズから、1005サイズへと小型化が進みつつある。また最近では例えばTDKが2019年8月20日に、使用温度範囲をマイナス55℃〜プラス150℃に拡大した「グレード0(Grade0)」対応で、静電容量を小さくした1005サイズの車載イーサネット用積層チップバリスタ「AVRH10C101KT1R1NE8」を製品化している。
「AEC-Q200」の「グレード0(Grade0)」に対応し、静電容量を1.1±0.3pFと小さくした1005サイズの車載イーサネット用積層チップバリスタ「AVRH10C101KT1R1NE8」。TDKの2019年8月20日付ニュースリリースから(クリックで拡大)(次回に続く)
⇒「福田昭のデバイス通信」
EMC規制の始まりと、EMC対策部品の働き
差動伝送ラインを雑音から守るコモンモードフィルタ(後編)
村田製作所の新社長に中島氏、創業家以外から初
5Gの導入で変わる? RFチップの材料
2019年の欧州特許出願数、日本がアジア1位を堅守Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
記事ランキング