Intelは、2020年Q1の半導体売上高で世界1位の座を死守した。しかし、今後の先行きは、かなり怪しい。というのは、「Intelの経営陣は、同社の10nmプロセス適用製品が、2020年のうちに、出荷数量で14nmプロセスを超えることはないと認めた」とあるように、いまだに10nmプロセスの立上に苦戦しているからだ。
一方、AMDが生産委託しているTSMCの微細化は順調だ。2019年には7nmプロセス(N7)および孔系にEUVを使うN7+が立ち上がり、12インチウエハー出荷枚数で、28〜7nmの半分をN7とN7+が占めるようになったからだ(図3)。そして、ことし(2020年)は、複数の多層配線にもEUVを使う5nmプロセスが、これまた順調に立ち上がっており、AMDの先端プロセッサの製造に適用される。
最も微細な配線(M1)のピッチで比較すると、Intelの10nmとTSMCやSamsungの7nmがほぼ同等である(図4)。しかし、Intelは10nmを十分立ち上げることができない一方で、TSMCでは7nmはもちろん、5nmが既に立ち上がっている。従って、最先端の微細化をまい進しているTSMCに生産委託するAMDとIntelとの差は、歴然としている。
このように考えてみると、AMDが2009年に製造部門をGFとして切り離してファブレスになったことが非常に有利に働いている。例えば、IntelとAMDの研究開発費を比較してみよう(図5)。2017年以降、Intelは毎年130億米ドルを超える研究開発費を投じている。これに対してAMDは、リサ・スーがCEOに就任した2014年以降、少しずつ研究開発費を拡大しているが、それでも2019年は15億米ドル強であり、Intelの8分の1しかない。
しかし、AMDは、その研究開発費のほぼ全てを設計に集中させることができる。膨大にカネがかかるプロセス開発は、TSMCに任せておけばいい。一方、垂直統合型のIntelは、設計、プロセス開発、製造技術、パッケージに至るまで、全方位的に研究開発を行わなくてはならない。
どちらが効率的か、もはや言うまでもないであろう。SOCだけでなく、プロセッサにおいても、ファブレス・ファンドリーモデルは最強かもしれない。
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