企業やコンシューマーの需要がCPU中心から、CPU、GPU、ソフトウェア、専用アプリケーションなど、より広い範囲へと移行したことで、市場の方向性が変わってきた。PC市場の王者であるIntelは、“より下”の存在の勢いに押されつつある。Intelは、クラウドコンピューティング、5G、AI、自動運転車など、より有望な分野に注力市場を転換しようとしてきた。
IntelのSwan氏は、「われわれは今、家庭から自家用車、都市、病院、工場、学校まで、あらゆる場所がますますスマート化している世界を目の当たりにしている」と語った。「こうした新しい世界では、われわれのビジネス機会は、CPUだけでなく、より多くのコンピュータに搭載される、より多くのIntelのシリコンである」(Swan氏)
だが、市場は納得していないようだ。Intelは、プロセス技術開発でTSMCに後れを取っていて、売上高を多様化するために大規模な投資を行っているにもかかわらず、依然としてPC市場に大きく依存している。Intelの売上高は好調だが、成長率は低下してマージンの圧迫が深刻化しており、その結果、同社株の評価は低下している。
売上高では世界最大のチップメーカーであるにもかかわらず、Intelは、はるかに小さい(はずの)ライバルであるNVIDIAの市場評価を押し上げた投資家にとって、もはや魅力的ではないのかもしれない。2020年7月27日の株式市場開始時点(米国時間)において、Intelの時価総額は2150億米ドルだった。Intelの株価は7月24日、7nmプロセス開発の遅れを明らかにした後、16%急落した。
2019年、Intelの株価は変動し、時価総額は2568億米ドルから2143億米ドルの範囲で推移していた。同社をウォッチしてきた金融アナリストの多くは、同社の株価を「ニュートラル」「ホールド」「アンダーパフォーム」のいずれかに格下げしており、Intelがプロセス技術に関する課題を解決し、売上総利益率の目標である60%台半ばを維持できる収益成長モデルに落ち着くまでは、株価の格上げはしない方向である。
それとは対照的に、NVIDIAの時価総額は2510億米ドルに達し、Intelを上回った。TTM(Trailing Twelve Months)売上高は118億米ドルと、Intelの790億米ドルよりも小さいが、株主からは、より良い投資見通しと見なされている。
半導体業界を救うのは、Intelの投資家の仕事ではない。もしIntelが製造をアウトソーシングする方向に舵を切った場合、Intelの投資家たちはその決断を支持するのだろうか。Intelよりも高い評価を得たのは、ファブレスであるNVIDIAだ。
製造をアウトソースすることは、“勝利の戦略”のようにも聞こえる。ならばIntelが、自分たちもそれにならえと考えるのも不思議ではない。ファウンドリーはほぼ一つの地域に集中しているので、米国やその他の国・地域にとってはあまりよくないのかもしれないが、投資した分だけの成果を確実に得られるのではないだろうか。
【翻訳:滝本麻貴、田中留美、編集:EE Times Japan】
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.