さらに、新手法を用いてn型とp型のSiC-MOSFETを試作したところ、n型では従来比2倍、p型では1.5倍の性能向上を確認した。具体的には、n型でチャネル移動度が40cm2/Vsから85cm2/Vsに、p型では11cm2/Vsから16cm2/Vsになっている。「特に、市場の主流であるn型SiC-MOSFETで性能を2倍にできたので、耐圧600Vや1200VクラスのSiC-MOSFETでは、オン抵抗を25〜35%低減できる。つまり、同じ定格電流を65〜75%のチップサイズで実現できることになり、デバイスのコストを約3割削減できる」(木本氏)
今回はp型SiC-MOSFETも試作して性能向上を確認できたことも大きい。木本氏は「p型MOSFETの性能は、CMOS ICの性能に直結するので、SiCのCMOS ICの開発が本格化した時を見据えると大きな成果を挙げられたのではないか」と語った。
素子の信頼性評価では、酸化膜の絶縁破壊が10MV/cmと良好な特性を確認した他、正電圧印加テスト、負電圧印加テストの両方で、電圧シフト量を従来よりも大幅に抑えられている。

素子の信頼性評価。特に、電圧印加による電圧シフト量が、従来よりも大幅に抑えられている。「今回は、前回よりも過酷な条件での評価結果を見せることができた」と木本氏は述べている 出典:京都大学(クリックで拡大)SiC-MOSFETの電子移動度は、NOガスが導入され始めた2000年以降、約20年にわたり大きな向上がなかった。「NOガスの導入条件を調整するくらいのことしかできず、大きく数値を上げることができなかった。今回の成果は20年ぶりのブレークスルーである」(木本氏)
新手法の酸化膜形成でSiC-MOSFETの性能が10倍に
新デバイス構造でSiC MOSFETの信頼性を向上
パワー半導体世界市場、2025年に243億5100万ドルに
25年にトップシェアへ、SiC市場をリードする“後発・ローム”
幅広い製品群をあらゆる用途へ、SiCパワーICにも注力
SJ構造を用いたバイポーラトランジスタ開発Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
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