実装ラインの次世代通信規格を前後編で解説する。前編となる今回は、従来の通信規格「SMEMA」と、それを置き換える「JARAS1014」を紹介する。
電子情報技術産業協会(JEITA)が発行した「2019年度版 実装技術ロードマップ」に関する完成報告会(2019年6月4日に東京で開催)と同ロードマップの概要をシリーズでご報告している。今回はその第86回である。
本シリーズの第3回から第22回までは第2章「注目される市場と電子機器群」の概要、第23回から第30回までは第3章「電子デバイスパッケージ」の概要、第31回から第63回までは第4章「電子部品」の概要、第64回から第72回までは第5章「プリント配線板」の概要を説明してきた。
第73回からは、第6章「実装設備」の内容を解説している。前回(第85回)では、第6章第5節「実装設備が目指す方向」と第6章第6節「ディフィカルトチャレンジ」(今後の課題)の概要をご紹介した。今回と次回は第6章第7節「実装設備のトピックス(設備間通信規格SEMI SMT-ELSの紹介)」の概要を解説する。
SEMI SMT-ELS(Equipment Link Standards)規格は、実装ラインで従来使われている設備間通信規格「SMEMA(The Surface Mount Equipment Manufacturers Association)」(または「IPC-SMEMA-9851」)を置き換えるとともに、大幅に機能を強化した次世代の通信規格として策定された。2018年6月にドラフト版、2019年4月に第1版が完成している。
従来の通信規格「SMEMA」は、プリント基板を設備間で搬送するために策定された。前工程の設備(例えばスクリーン印刷装置)と後工程の設備(例えばマウンタ)の間で、プリント基板を搬送するコンベヤーの動きを同期させることが目的である。具体的には電気接点の状態(クローズ/オープン)でプリント基板の送出と受け入れの状態をやりとりする。
すなわち前工程の設備がプリント基板を送り出せる状態になると、前工程側の接点がオープンからクローズへと遷移する。一方、後工程の設備がプリント基板を受け入れ可能な状態になると、後工程側の接点がオープンからクローズへと遷移する。両方の接点がクローズになったときに、コンベヤーが動いてプリント基板を前工程から後工程へと受け渡す。
SMEMAが規定する電気的仕様は接点の動作とタイミングの仕様、コネクターの仕様が大半で、ほかにはコンベヤーの機械的仕様(コンベヤーの高さ、プリント基板のクリアランスなど)を規定するにとどまる。従ってプリント基板に関するデータや実装設備が取得したデータ、実装ラインを管理するホストマシンのデータなどは、別の通信ネットワークによってやりとりしなければならない。別の通信ネットワークを構築するには膨大な手間がかかる。また特定の実装設備ベンダーが通信ネットワークを提供していたとしても、通信ネットワークを利用するためには1社購買となってしまう。複数の実装設備ベンダーの装置で構成される実装ラインには適用できない。
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