Caulfield氏は、「世界がパンデミックに襲われたことで、パーベイシブコンピューティングの需要が予想を上回る速さで増大した。1年の間に10年間分である。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響により、2020年の1年間で、10年間分の技術導入が進んだのだ」と述べる。同氏は、多少の誇張があるかもしれないことを認めているが、同氏が好んで使っていた「1年間で10年間分」というフレーズは、十分に正確な表現だといえるだろう。
同氏は、「GLOBALFOUNDRIESが2020年6月ごろに発表していた需要予測から、10億米ドルも増加している。われわれは今や、約60億米ドル規模のメーカーとなった」と述べる。
GLOBALFOUNDRIESは、それに対する準備ができていなかった。しかし最近、世界規模で市場分野の枠を超えて半導体不足が生じていることから、誰も準備などできていなかっただろう。
このような半導体不足により、特に深刻な打撃を受けているのが、自動車業界だ。Caulfield氏によると、GLOBALFOUNDRIESは自動車業界の幹部と会談し、不足が続いたときの影響を説明されたという。自動車メーカーが工場を閉鎖すると、そのエコシステムの中にある5社、10社の企業も閉鎖される。そうなると、多くの雇用が失われることになるのだ。
GLOBALFOUNDRIESは、その不足分を補うための対策を取ったという。「ホワイトハウスからの指示がなくても、自動車メーカーを存続させるために、当社の製造能力を適切に配分した。われわれは、厳しい取り組みを進めなくてはならなかった」(同氏)
もちろん、その対策を取ったことでGLOBALFOUNDRIESに注目した者はほとんどいなかった。
Caulfield氏は、パーベイシブコンピューティングへの需要の高まりが、IC市場の“残りの70%”に対する製造能力の投資不足を露呈させたと指摘する。
そのような中、Intelがファウンドリー事業に参入することを発表した。そしてこちらは、世界的に注目されている。
Caulfield氏は、「製造業が再び脚光を浴びる時期が必ずやってくる。私たちは物理的な世界に生きており、誰かがモノづくりをしなければならない。Intelも、半導体を製造できる数少ない企業だ。Intelが(コンピュータ中心分野の)30%を押さえるとしたら、われわれは“残りの70%”をカバーしたい」と語った。
同氏は、I/OチップやSERDESなど、CPU以外の分野にも投資が必要だと語る。ただ、その投資の内容が異なることは指摘しておきたい。「プロセッサの製造を手掛けるメーカーは、研究開発予算の80%をプロセス開発と装置の購入、つまり“オンウエハーでの経験”に費やし、残りをプロセス開発キット(PDK)に費やすことになるだろう」とCaulfield氏は説明する。GLOBALFOUNDRIESは、その逆になる。
「われわれは、SynopsysやCadence、Armなどわれわれのエコシステム構築を支援してくれるパートナーと協業し、PDKやIP(Intellectual Property)に相当な金額を投入している。そこからイノベーションが生まれると考えている」(同氏)
Caulfield氏は、「私の使命は、ムーアの法則が唯一のイノベーションであると世界や自身に信じ込ませてしまっている業界の窮地から、自らを脱却させることだ。(ムーアの法則が唯一のイノベーションであると考えることは)RFや組み込みメモリ、電気自動車用の高電圧デバイスに携わる何万人ものエンジニアを侮辱しているとすら、思う」と強調する。
Caulfield氏は自身のスマートフォンを掲げ、「スマホ決済をしますか? そのチップは当社が製造している。スマホで音楽を聞く? そのチップもわれわれが作っている。タッチスクリーンも、スマホのバッテリー寿命を延ばす電源管理ICも、われわれが作っている。こうしたあらゆるチップがイノベーションの結果であり、それはトランジスタが5nmプロセスから3nmプロセスに移行することとは、何の関係もないのだ」と語った。
【翻訳:滝本麻貴、田中留美、編集:EE Times Japan】
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