米国の半導体業界は、国内にファウンドリーを建設する上で、特に税制上のさまざまな優遇措置を提供することが可能な半導体法案の制定を待ち望んでいる。こうした中でIntelは、米国の半導体製造の復活を目指すべく、国内にメガファブを建設するための交渉を進めている最中だ。
米国の半導体業界は、米国内にファウンドリーを構築する上で、特に税制上のさまざまな優遇措置を提供することが可能な半導体法案の制定を待ち望んでいる。こうした中でIntelは、米国の半導体製造の復活を目指すべく、国内にメガファブ(巨大工場)を建設するための交渉を進めているさなかだという。
同社のCEO(最高経営責任者)であるPat Gelsinger氏は、「現在、地方当局との交渉を進めているところだ。2021年末までには、当社の米国工場建設について発表することができるだろう」と述べている。同社はこの新工場を、ファウンドリーに必要とされる安価な電力や豊富な水などのインフラとともに、大学の近くに設立したい考えだという。
Gelsinger氏は、Washington Postが配信したインタビューで、「新しいメガファブには、最先端のプロセスやパッケージング技術をサポートする6〜8のモジュールが含まれる」と述べている。同社は目標として”小さな都市の構築”を掲げ、ICサプライヤーを引き付け、半導体設計者や、現在切実に求められている製造エンジニアなどを育成するための拠点として機能させることを目指す。
新工場の建設費用は、約150億米ドルとなる見込みだ。同社は、米国が世界半導体生産能力において再びシェア拡大を実現するための方法を模索する中で、その新工場が、「全面的な転換点となるだろう」(同氏)と主張している。
「われわれに必要なのは、より強力な回復力(レジリエンス)を備えながら、全体的な均衡も取れているサプライチェーンだ。税制上の優遇措置や、半導体の研究開発資金などを提供するための法案が現在審議されているが、これが成立すれば、半導体サプライチェーンがアジアから離れていくのに伴い、世界半導体生産能力における米国半導体市場のシェアは、現在の約12%から、今後10年間で30%まで拡大するだろう」(Gelsinger氏)
さらに同氏は、「Intelとしては、現在の能力を超える迅速さで工場を設立したい考えであるため、急いで法案を成立させるよう議員たちに要請しているところだ」と述べる。
これまで、中国をはじめさまざまな国が提供してきた優遇措置によって、アジアでの工場建設が経済的に魅力的なものになっていたため、欧米の半導体メーカーは苦戦してきた。だが、欧米の半導体製造を再構築していく上で、減税をはじめとする優遇措置を実現することにより、こうしたアジアの優遇措置の効果を相殺することが可能になる。
Gelsinger氏は、「欧米が『半導体工場は不要だ』と言ったわけではない。アジア各国が、『アジアには半導体工場が必要だ』と言ったのだ。そして、強力な優遇措置を提供することにより、アジアに工場を建設すれば半導体業界の競争力をより高められるということを強調した」と述べる。
Gelsinger氏は、5カ月前に現職に就任して以来、さまざまな障害を乗り越えながら積極的にIntelの再活性化に取り組んでいる。その戦略の一環として、ファウンドリーのライバルであるTSMCやSamsung Electronicsに追い付くべく、200億米ドルの投資も発表した。
Intelのファウンドリー事業では、Amazon Web Services(AWS)やQualcommが顧客であることが明らかになった。AWSはIntelのパッケージング技術を、Qualcommはスマートフォンのプラットフォームに「Intel 20A」プロセスノードを採用する予定だ。
Intelは、「Intel 18A」プロセスノードを導入する2025年までに、製造業のリーダーとしての地位を回復することを目指している。
Gelsinger氏は、「インテルはつまづいた」と認めている。このメガファブは、同社がチップの優位性を取り戻すための青写真の一部なのだ。米EE Times編集長のBrian Santoは、最近のポッドキャストで、IntelのシニアバイスプレジデントであるSanjay Natarajan氏とともに、同社のチップ戦略を深く掘り下げた。
その戦略には、ムーアの法則から“最後の1つのトランジスタまで絞り出す”ことも含む。Gelsinger氏は、「周期表を使い切るまで、われわれが立ち止まることはない」と強調した。
【翻訳:田中留美、編集:EE Times Japan】
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