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“手作りのラズパイ教室”に見るプログラミング教育の縮図踊るバズワード 〜Behind the Buzzword(14)STEM教育(2)(1/8 ページ)

今回は、“手作りのラスパイ教室”を運営するお母さんたちへのインタビューから、プログラミング教育について考えてみます。赤裸々に語っていただいた本音から見えてきたのは、「新しいプログラミング教育の形」でした。

» 2021年08月23日 11時30分 公開
[江端智一EE Times Japan]

「業界のトレンド」といわれる技術の名称は、“バズワード”になることが少なくありません。“M2M”“ユビキタス”“Web2.0”、そして“AI”。理解不能な技術が登場すると、それに“もっともらしい名前”を付けて分かったフリをするのです。このように作られた名前に世界は踊り、私たち技術者を翻弄した揚げ句、最後は無責任に捨て去りました――ひと言の謝罪もなく。今ここに、かつて「“AI”という技術は存在しない」と2年間叫び続けた著者が再び立ち上がります。あなたの「分かったフリ」を冷酷に問い詰め、糾弾するためです。⇒連載バックナンバー


「GAFA」を育てたのは私(たち)である

 「GAFA(ガーファ)」とは、Google, Apple, Facebook, Amazonの、米国のIT(情報技術)関連企業大手4社の頭文字をとって名付けられた造語です。独自のインターネットサービスの基盤(プラットフォーム)を持ち、その優位的な(市場独占的な)立場で、私達の生活を一変させています。

 まあ、一言で言えば、駅前から本屋が消えたのは、Amazon(と私)のせいです。私が、秋葉原にでかけなくなったのも、Amazon(とコロナ禍)のせいです。市民図書館から10冊以上の本を抱えて持ち帰らなくて済むようになったのはGoogle(Scholar)のせいです。

 Apple(の製品)を利用するようになったのは、会社が「iPhone」を社用携帯として採用したからであり、ソフト外注担当者から「Androidのタブレットよりも、『iPad』にしてくれ(仕様が統一されていて、納品時の検収にトラブルが少ないから)」と頼みこまれたからです。

 私は、Facebookのアカウントを持っているのですが、昔、インターンで私が世話した、フランスの学生が、ずうずうしくも「紹介状を書いてくれ」などと連絡してくる(その他も、一方的に頼み事をしてくるので、腹がたってきて)し、昼飯の写真や、国外出張時に空港内での自撮り写真が送りつけられてきて、心底うっとうしいので、Facebookの通知機能をOFFにしています。

 私にとってGAFAとは ―― インターネットの黎明期に誕生したショボイ検索エンジン(Google)であって、ECコマース(Amazon)であって、カルトなMACマニアに支えられたPCベンダー(Apple)であって、"実名公開"だけが評価できるmixiなどとは比較にならないほどしょぼい規模の名刺交換ページ(Facebook)であって ―― はっきり言って、やつらは、私(たち)、エンジニアや研究員が育ててやったようなものです

 なのに、

―― ひとりで大きくなったような顔しやがって。

 やつらは、本当にシャレにならないくらい、大きく、恐ろしく強力になりました。今や、米国大統領の発言を封じられるほどの権力になっています。まったく、ITプラットフォーマー風情が……と、まあ、これを『負け犬の遠吠え』といいます。

 それはさておき。



 皆さん、ご存じかもしれませんが、GAFA、マイクロソフト、そして、国内のIT企業の創設者の多くが、ITエンジニア(プログラマー等)です。

 私は仕事柄、これらのIT企業の創立者の動向をリアルタイムで追ってきました。彼らは、彼らのビジネスに必要な、ITサービス、プラットフォーム、あるいは、オペレーティングシステム、ソフトウェアパッケージ等の商材を、独力で、スクラッチ("ゼロから")から作りました ―― プログラミングで。

 IT系企業の初期の商材開発のコストは、他の業種と比較すれば、非常に安いです。「基本機能の開発」に限定すれば、人件費を除けば"タダ"といっても良いくらいです。原則、パソコン1台あれば、始めることができるからです*)

*)今なら、プログラムの開発環境は、無料でそろえることができます。

 なにより、学歴、気質、リア充、コミュ障、一切不問 ―― 自分のイメージするサービスや商材を、自力でプログラミングできる能力と気力さえあれば、誰にでもチャンスはあります。まあ、そのサービスが「多くの人が『欲しい』と思えるものでなければなりませんが。

 あと、これらの創立者の経歴を調べてみると、全員、「人の話を聞かない」「決して諦めない」「自分のアイデアを狂信的なまでに信じ込んでいる」、しつこくてうっとうしい、面倒くさいプログラマーであった、という点が共通しています。

 ただ、忘れてはいけないのは、これらのプログラマーの条件は、必要条件であって、十分条件ではない、ということです。仕事柄、(私も含めて)このような面倒くさいプログラマーを何人か知っていますが、彼らは、今なお、"GAFA"ではありません

 そもそも、前回ご紹介した通り、我が国のプログラマーの収入は、決して高いものではありません。

 さらに、私が調べた限り、我が国においては"理系優位"も成立していません。

 つまり、GAFAの創立者のサクセスストーリーを"間に受けて"、我が国で、「プログラミング教育」やら、「STEM教育」やらが、流行っているのだとしたら ―― それこそ、本当に"間抜け"な話なのです。

「プログラミング教育」っていったい何?

 こんにちは。江端智一です。

 今回は、「踊るバズワード 〜Behind the Buzzword」のシリーズ「STEM教育」の2回目です。

 前回に引き続き、今回の前半は「プログラミング教育」についてお話をして、後半から、「STEM教育って何?」という話に入っていきたいと思っています。

 まず、「プログラミング教育」と聞けば、「プログラミングを学ぶこと」と考えるのが普通です。しかし、我が国の義務教育と高等教育においては、全く違うので注意しておく必要があります ―― "プログラミング技術"ではなくて、"プログラミング的思考"なるものが、目的です。

 以下は、現在予定されている、我が国の『プログラミング教育』の実施スケジュールです。

 "プログラム的思考"とか言われていますが、このスケジュールを見ている限り、結局のところ「自力でプログラムを記述しなければならない」ことになると思います。どんな形で出題されることになりそうか、採点方法はどうするのか、など、興味がありますので、これから私も調べて、次回以降ご報告致します。

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