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「半導体は清々しい」、ルネサス柴田社長インタビューDialog買収でアナログの土壌整う(2/2 ページ)

» 2021年09月24日 11時30分 公開
[村尾麻悠子EE Times Japan]
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オートモーティブ事業の本格的な改革へ

――買収完了と同時に、ウィニング・コンビネーションを、IoTと産業向けに39種類発表しました。やはりIoT・インフラ事業本部の強化を狙うのでしょうか。

柴田氏 短期的な業績の上ではそうだが、必ずしもIoT・インフラ事業本部だけではない。むしろ、Dialogを買収したことでようやく、オートモーティブ事業で、より大きなカルチャーの変革や新しい手法の導入といった本格的なてこ入れができる準備が整ったと考えている。市場が安定して成長基調だったオートモーティブ事業は、抜本的な改革が後回しになっていた。

 これまでは、自動車以外の分野を強化することが重要だった。2013年10月に社外取締役としてルネサスに加わって以来、不採算事業の整理と縮小を行ってきたが、収益性を重視した結果として、オートモーティブ以外の事業は、「利益は出るが、どんどん事業規模は縮小していく」という状態が続いた。事業に携わる従業員たちも、何をどうすれば伸ばせるのか分からず、苦しんでもがいている状況だった。そこでIntersilとIDTを買収し、新たなソリューションや分野を強化して成長市場を狙う方向に舵を切った。

 そうしてある程度、土壌ができたところで、今回Dialogが加わった。パワーマネジメントやコネクティビティといった技術を活用することで、IoT・インフラ事業についてはこれからも成長できるだろう。

 これでようやく、オートモーティブ事業でも新しいことに挑戦できる。その最初のステップとして、Dialogでカスタム・ミックスド・シグナル(CMS)事業のゼネラルマネジャーを務めていたVivek Bhan氏を、オートモーティブソリューション事業本部のアナログ&パワー製品事業統括に据えた。

――昨今の半導体不足は、まず自動車分野で明らかになりましたが、自動車分野のサプライチェーンの勢力図も変わっているように思います。

柴田氏 音を立てて変わっている。先駆的な見方をする自動車業界の人たちにとって、半導体の位置付けも、半導体に対する要求も、従来とは全く異なるものになっている。

 ただ、実は、「求めているものを実現すればするほど、半導体は何でもいい」と考えている。従来のようにハードウェアをどうにか差別化し、ルネサスの製品しか使えないように囲い込むという発想は変えなくてはならない。

 例えば自動運転用のSoCであれば、ルネサス製でもQualcomm製でもNXP Semiconductors製でも、どこの製品でも使えるようなプラットフォームが欲しいというのが、顧客の要望だ。われわれも、それが健全だと思っている。そうした中で、ほんの少しだけわれわれの技術が先行していたり、使いやすかったりする、そう感じてもらえる製品を蓄積していくことが重要になる。

左=Dialog買収後の製品別および市場別の売上高の比率/右=2021年12月期第2四半期(4〜6月)のセグメント別業績[クリックで拡大] 出所:ルネサス エレクトロニクス

半導体は「すがすがしいビジネス」

――半導体不足もそうですが、米中ハイテク戦争や各国が半導体政策に力を入れるなど、昨今は半導体の存在が大きくなっていると感じます。

柴田氏 半導体は、すがすがしいビジネスだと思う。以前は投資家だったので、幅広い分野に接して、幅広い分野に投資してきたが、中には「このビジネスは本当に意味があるのだろうか」と感じるものもあった。だが半導体は違う。

 半導体技術は付加価値のかたまりで、社会や人間の生活をよりよくするということに、真正面から向き合っている業界だ。

 しかも、グローバルでそれができる世界。那珂工場が火災の被害から生産再開に至るまで、多くのグローバルな顧客、サプライヤー、パートナーの協力をいただいたが、その際も、地政学的な争いや制約を超えて、グローバルで協力し合いたいという本音の部分を共有することができた。そういうマインドで仕事ができる、本当にすがすがしい業界だと感じる。幸いなことにコロナ下においても利益が伸びていて、順調に成長している。そういう業界であることを、1人でも多くの人と分かち合うことができたらと思っている。

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