さらにIntelは、イタリアに最先端のバックエンド工場を建設するための交渉を開始したことも明かした。同工場への投資は最大45億ユーロとなる可能性があり、2025〜2027年の間に操業を開始する予定だという。同工場では、Intel直雇用で約1500人、サプライヤーやパートナー全体でさらに3500人の雇用創出を見込んでいる。IntelのCEO(最高経営責任者)、Pat Gelsinger氏は、この工場が「新しく革新的な技術を用いたEU初の施設にすることを目指している」と説明した。
同社は2022年2月にTower Semiconductor(以下、Tower)を買収すると発表しているが、Towerはイタリアのアグラーテ・ブリアンツァに工場を持つSTMicroelectronics(以下、ST)とパートナーシップを結んでおり、Gelsinger氏は、「(今回の計画は)イタリアで追求するファウンドリーの革新と成長の機会に追加されることになる。STとの提携は自動車、産業、個人向け電子機器などより多くの半導体を必要とする主要分野に対応し、Intelが欧州全体がファウンドリーサービスを拡大していくための触媒になるだろう」としている。
同社はこれらドイツ、アイルランド、イタリアへの投資に計330億ユーロ以上を投じる計画だ。Gelsinger氏は、半導体不足が続く市場の現状に触れたうえで、「現在、半導体の80%はアジアで生産されているが、よりバランスの取れた強靭なサプライチェーンが世界的に求められている。われわれは最先端の技術を欧州に導入し、欧州の次世代半導体エコシステムの構築を支援する」と述べた。
Intelは今回、新たな研究開発拠点の設置や拡張についても発表した。具体的には、まず、フランスのプラトー・ド・サクレー周辺に研究開発拠点を建設する計画だ。Intelは、「フランスはIntelのハイパフォーマンスコンピューティング(HPC)およびAI(人工知能)設計能力の欧州本部となる予定だ。HPCとAIの革新は、自動車、農業、気候、創薬、エネルギー、ゲノム、ライフサイエンス、セキュリティなどの幅広い産業分野に恩恵をもたらし、全ての欧州市民の生活を大きく向上させることになる」と述べている。同拠点では1000人のハイテク雇用を創出する見込みで、2024年末までに450人の雇用を確保する予定だ。
フランスにはさらにファウンドリーデザインセンターも設立し、世界の業界パートナーや顧客にデザインサービスやそれに伴う副次的なサービスを提供する予定だという。
また、ポーランドのグダニスク拠点でもディープニューラルネットワーク(DNN)、オーディオ、グラフィックス、データセンター、クラウドコンピューティングの分野でのソリューション開発に重点を置き、2023年までに研究所スペースを50%拡張する予定だとしている。
Intelはスペインにおいても過去10年間、バルセロナのスーパーコンピューティングセンターとエクサスケールアーキテクチャで協業してきたが、Gelsinger氏は、「次の10年に向けてゼータスケールアーキテクチャを開発中だ」と説明。スーパーコンピューティングセンターとIntelは、バルセロナに共同ラボを設立し、コンピューティングを進化させる計画だという。
Gelsinger氏は、「これらの投資によって、ベルギーのimec、オランダのデルフト工科大学、フランスのCEA-Leti(電子情報技術研究所)、ドイツのフラウンホーファー研究所など、欧州各地の研究機関との長年の関係をさらに強化することができる。欧州には世界トップクラスの大学、研究機関、主要な半導体メーカーやサプライヤーが集まっており、研究開発への追加投資によってこのイノベーションクラスタを支援し、われわれの最先端製造計画に結び付けることで、欧州のイノベーションの輪が広がるだろう」と述べた。
Intelによると、同社は30年以上前から欧州に進出しており、現在EU全体で約1万人の従業員を雇用。過去2年間で、欧州のサプライヤーと100億ユーロ以上の取引をしているという。同社は「われわれはシリコン供給の世界的なバランス調整に取り組んでおり、この支出額は2026年までにほぼ倍増すると予想している」と説明している。なお、同社は欧州の全新拠点において100%再生可能エネルギー使用や埋め立て廃棄物ゼロなどを達成することを目標としているという。
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