とはいえ、生産能力の過剰は依然として懸念材料だ。Wennink氏は、ASMLが2022年2月9日(オランダ時間)に発表した2021年の年次報告書で、その懸念を軽減する発言をしている。
同氏は年次報告書で、「米国とEU、中国、日本、韓国を合わせると、業界の年間設備投資額は2021年の1500億米ドルのほぼ2倍になると予想される。これによって、潜在的な供給過剰に対する懸念が生まれていることも認識している」と述べている。
しかし、同氏はこの懸念に対して、「半導体業界の大きな成長見通しには、はるかに多くの生産能力が必要だ」と反論し、「これに対応するための高水準の設備投資を考えると、業界パートナー各社はアクセス可能で効率的なイノベーションエコシステムを維持するために十分な努力を払っていくと考えられる」とコメントしている。
ただし、McGregor氏は、「供給過剰の可能性については確定的ではないものの、半導体産業に対する地政学的および経済的影響を考慮した場合は特に、その可能性は否めない」とも述べている。
McGregor氏は、「供給過剰の可能性は間違いなくある。特にIntelが現在、TSMCやSamsungなどと同様に、4つの新工場の建設を予定していることを考えると、供給過剰になる可能性がある。今後稼働する可能性のある全ての生産能力を合わせると、オーバーシュートする可能性があるのだ。Micron Technologyのリーハイ工場(米国ユタ州)は10年以上稼働していない状態だった。また、現在フル稼働しているIntelの『Fab 42』も長期間放置されたままだった。こうした状況は珍しくなく、また起こりうることであることは間違いない」と語った。
「一方で、単に需要に追い付くということではなく、製造のバランスを見直すという必要もある。私は5年前、『共産主義政権の脅威にさらされている地域に、半導体の製造能力の50%以上があるという事実を考えてみてほしい』と指摘した。これは恐ろしいことだが、5年前よりも現在の方が状況は悪化している。この数年で地政学が狂ってしまい、何が起こるか分からない、というのも製造のバランスを見直すべき理由だ。たとえ供給が需要を上回ったとしても、その他の地域、とりわけ欧州や北米で生産能力を増強することは、重要になるだろう」(McGregor氏)
【翻訳:滝本麻貴、編集:EE Times Japan】
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