図4は、中国Huaweiから分離したスマートフォンメーカーHONORの5Gスマートフォン「Honor X20 5G」の様子である。
プラットフォームには台湾MediaTekのミドル向け「Dimensity 900」が採用されている。Dimensity 900は、QualcommのSnapdragon 778と同じTSMCの6nmプロセスで製造されている。CPUもSnapdraron 778と同じArm Cortex-A78が高速高性能に採用されるが、Qualcommが4基搭載されているのに対し、MediaTekでは2基と半減させている。その分、面積を削減できている。
GPUはArmのMali G68を4コア搭載する。Dimensity 700に比べてバージョンもアップし、コア数も倍に増やしているので、面積はミドル向けでは大きなものとなっている。QualcommやMediaTek、Samsung、UNISOCらは製造技術、CPUの個数配分、バージョン、GPUのバージョン、個数の組み合わせを駆使し、廉価版、ミドルハイ向けのプラットフォームを多数用意し、仕様の穴を作らないようにして、ハイからローまでをカバーする“面”を作っているわけだ。
表1は、今回報告した4チップのまとめである。5Gという新市場で多くのパイを取るためには幅広くさまざまな仕様を用意し、漏れのない、“一網打尽的”なラインアップ開発を常に行わなければならない。ハイエンドだけを突き進められるAppleの場合は、過去のハイエンドが翌年はミドルハイになり、翌々年にはミドルをカバーする。こうした方法でも“面”は形成できる。
表2は今回取り上げた4チップを含む、Qualcomm、MediaTekのロー、ミドル、ミドルハイ向けの5GプロセッサのCPUの分布とおおまかな面積をグラフ化したものである。
全体的にMediaTekのプロセッサの方が、ひと回り面積が小さい。コストパフォーマンスが良いように見える。しかしQualcommの場合には組み合わされるトランシーバーに加え、電源IC、オーディオ系、パワーアンプなどが充実しており、プロセッサの面積比較だけで単純に優勝劣敗を判断することはできない。いずれにしても、両社は多彩なプラットフォームを提供することで5G市場の拡大に大きな貢献をしていると言えよう。
図5は、2022年以降に発売された新プロセッサを搭載する製品群の一部だ。弊社では既に解析を行っている。ハイエンドでは4nmが主流になっている。Samsungの「Exynos 2200」、Qualcommの「Snapdragon 8 Gen 1」、MediaTekの「Dimensity 9000」(いずれも入手済解析中)の他、Appleの「Mac Studio」では2シリコンを連結させた「M1 Ultra」が採用されている。今後、図5に掲載したプロセッサについても、本連載で報告していく予定である。
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