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定年を自覚したエンジニアがひねり出した“投資のHello Worldアプローチ”「お金に愛されないエンジニア」のための新行動論(2)(2/11 ページ)

» 2022年04月28日 12時30分 公開
[江端智一EE Times Japan]

「無収入の第二の人生」一歩手前

 こんにちは、江端智一です。『「お金に愛されないエンジニア」のための新行動論』の第2回目です。今回も、定年がスコープに入ってきた私(江端)の、なにふり構わない日々をご紹介したいと思います。

 さて、定年、退職、リタイア……と、このコラムでは似たような言葉が、いろいろ出てきて紛らわしいので、言葉の意味を以下のように決めておきたいと思います。

退職……私が、勤めている職を辞めること。会社と私の雇用契約が終了すること
定年……私が今勤務している会社を退職する決まりになっている年齢のこと
年金生活……収入を得る業務を全て停止して、年金のみで生活すること

 私の場合、退職≒定年ですが、今から定年後生活の準備を始め、また100%の年金生活に入ったとしても、なんらかの形でジタバタし続けなければなりません。で、―― おいおい、ちょっと待てよ、まだ就労期間の半分相当の期間を生きなければならないぞ ―― と気がついたのです。

 世間で評判の悪い「前期高齢者(65歳〜74歳)」「後期高齢者(75歳〜)」という用語ですが、私、父と母の介護と、最期をみとって、あの言葉の意味が分かりました。

 前期高齢者とは「日常生活ができる(可能性の高い)高齢者」であり、後期高齢者とは「寝たきりになる(可能性の高い)高齢者」という意味です。

 私も、いずれは認知症となり、被介護人となり、どこかの病院のベッドの上で死に至ると思います*)。キーボードから文字を入力することができなくなる、その時を、ざっくり後期高齢者となる75歳と仮定したとしても、それでもまだ20年近い年月が残っていることになります ―― 無収入の第二の人生です。

*)連載一覧「江端さんのDIY奮闘記

 結構、軽い気持ちで始めた連載だったのですが、よく考えれば、これ、学生さんの「就活」や、パートナー探しの「婚活」に匹敵するほどの、巨大テーマだったことに、今更ながら気が付きました。

 なんでこんな重大なことを、ちゃんと私に報告してくれなかったんだ! ―― と思ったのですが、よく考えれば、政府は散々警告してくれていましたね、あの例の「老後2000万円」の問題などは、その一環と言えましょう。当時、世間では『将来の年金制度廃止への布石』と捉えられて、大炎上しました。

 ただ、定年後の期間の生存戦略に、「就活」や「婚活」に相当する”用語”が存在しないのは、なんとも釈然としません。「定年延長」が、それに相当するかと言われると、しっくり来ない感じです。つまり、わが国には、定年後のシニアの受け皿の考え方が確立していないように思われます。

 『定年後にまで働きたくない』、という人もいるかもしれませんが、日本人は、「働くのが好き」です ―― というか、わが国は、世界でも珍しい「働きたいシニア」が大量に存在している国です。

図中の参照先

 各国との比較は割愛しますが、先進国では間違いなく世界第トップクラスの「働き続けたい国民性」の国であることは間違いありません。

 主な要因は、将来への金銭的な不安が大半だと推測できますが、私のように、「ヒマしていると、死にそうになる*)」という人間もいるでしょうし、あるいは「社会から必要とされている実感を得たい」と考える人もいると思います。

*)関連記事「デジタル時代の敬老精神 〜シニア活用の心構えとは

江端の定年後のビジョン

 では、私(江端)の定年後のビジョンが、どのようなものであるかを、書き出してみました。

 衣食住に関しては、命を維持できる以上のことを望んでいませんし、今回のコロナ禍の外出自粛の日々において、私は他の人より「ひきこもりが得意」であることが分かってきました ―― 少なくとも、他人とF2F(Face to Face)のコミュニケーションができないことに対して、『我慢の限界』などという気持ちに至ったことは一度もありません。むしろ、仕事が捗ったくらいです。

 無欲ではありません。しかし、金銭、異性、物品などに対して、他人と競い合う気持ちは、少ないように思えます。知識や技術を取得したいとは思いますが、それは、自分の満足のためであり、他人に対してマウントを取りたいという気持ちは、少ないと思います(私をディスる意見を吐く奴は、論破してつぶしたいとは思いますが)。

 私の定年後のビジョンは、「(1)苦痛を回避し続けること」「(2)自由に使える小金があること」「(3)(過去の栄光ではなく)現在での『社会のお役に立てている』という実感」の3つ、と思っています。特に(3)については、「まだ『社会のお荷物に』にはなっていない」という実感を持って生きたいと考えています。

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