ルネサスはこれらの技術を適用し、22nmロジック混載MRAMプロセスで試作した32MビットのMRAMメモリセルアレイを搭載したテストチップを用意。このテストチップを評価したところ、最大接合温度150℃において、5.9ナノ秒のランダムリードアクセス時間を達成。書き換えスループットでは、従来方式に比べて3.9倍となる5.8Mバイト/秒を実現した。
近年、IoT(モノのインターネット)やAI(人工知能)技術の進歩により、民生機器や産業機器では、より高い処理性能が求められるようになっている。その処理性能は、従来のMCUとMPUのちょうど中間に当たる領域であることから、「クロスオーバー領域」とも呼ばれる。
ルネサスは、「BOMコストが低く、従来の組み込み開発環境の資産を生かせるMCUで、このクロスオーバー領域をカバーするには、MCUのさらなる高性能化が要求される。さらに、メモリでもコスト低減は必須の要件である」と説明する。
MCUの処理性能を上げる(つまりCPUの動作周波数を上げる)には、より微細なプロセスを適用することが一般的だ。ロジックプロセスでは、7nm、5nmといった最先端プロセスが登場しているが、「不揮発メモリが混載されるプロセスの最先端は、現在ルネサスがフラッシュ混載MCUを製造している28nmが最先端である」(同社)
28nm以降の先端プロセスに混載する不揮発メモリには、前工程で形成されるフラッシュメモリよりも、配線工程で形成されるMRAMの方が、混載プロセスの開発が容易で、製造コストも安くなる。
ルネサスとしては、まずはMCUの性能を引き上げることでクロスオーバー領域をカバーする方針だ。ルネサスは現在、動作周波数が1GHz付近では、MPUである「RZ」ファミリーを展開している。一方、主要なMCUである独自コアの「RX」ファミリーやArmコアの「RA」ファミリーでは、最大周波数が240MHzや200MHzとなっている。「不揮発メモリを混載したMCUは使い勝手が優れているので、今回発表した混載MRAMの技術開発を続けながら、クロスオーバー領域に向けて、今後もMCUのさらなる高性能化を目指していく」(ルネサス)
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