Optaneの普及をサポートするためのエコシステムには、ハードウェアとソフトウェアの両方が必要だった。
Intelは、ハードウェアに関しては、App DirectモードでOptane Persistent Memoryにネイティブアクセスすることを許可した。しかしそのためには、新しいAPIが必要なだけでなく、DRAM向けに書かれたアプリケーションも書き換えなければならなかった。そこで、memVergeなどのメーカーが、さまざまな種類のメモリ間で、階層化されたアルゴリズムを採用することによって、ハードウェアがメモリモードで実行する内容を複製するためのソフトウェアを開発するようになった。ソフトウェア定義された、DRAM互換性のあるインタフェースをアプリケーションに提供することにより、顧客企業がOptaneを利用するために自社のアプリケーションを書き換えなくても済むようにしたのだ。
一方、Intermolecularは、3D垂直構造メモリアレイに向けた成膜技術を開発したと発表した。これは、PVD(物理蒸着)の代わりに原子層堆積(ALD)カルコゲナイドを使用することによって、3D XPoint技術の第2バージョンを実現する可能性を秘めていた。それまでは、3D構造で数十層を積層することができなかったために、メモリ密度が制限され、コストが高くなるという問題があったが、同社のデバイスによってその問題を克服することが可能になった。OptaneのSSDおよびDIMM、両方のフォームファクターについて量産の可能性が見え始めると同時に、3D XPoint技術の低コスト化を実現する可能性が出てきたのだ。
OptaneのアーリーアダプターであるLenovoは、サーバ/ストレージ機器の全体的なリフレッシュの一環として、DIMMフォームファクターにIntel Optaneを搭載した製品を、11種類発表している。一方Intel自身も、M.2 SSDで同社の144層のQLC(4ビット/セル)3D NANDフラッシュとOptaneを組み合わせ、Optaneでインスタント起動機能と応答性も実現することにより、ユーザーがファイルを迅速に検索して見つけ出したり、アプリケーションを素早く起動させることができるようにした。
Optaneは、QLC NAND SSDの前面に配置することで大量のデータ収集が可能になるため、QLCを用いる前に最適化され、ボトルネックを解消することができる。このためデータ配置の高効率化や、QLC SSDの寿命延長も実現することが可能になった。
ほんの数カ月前まで、Intelが明言していなくても、Optaneには未来が広がっているように見えたのだ。
フランスの調査会社Yole Groupが発表したレポート「Emerging Non-Volatile Memory Report 2022(新興不揮発性メモリレポート2022)」によると、新興メモリで構成されるわずかなパイの中でPCMが大きな割合を占めるようになったが、それはIntelのOptaneのおかげだという。なお、スタンドアロン型のメモリ市場では、全体の96.7%を占めるNANDフラッシュとDRAMが優勢を維持しているため、PCMやMRAM、ReRAMのシェアはわずか0.4%にとどまっている。
Yoleの予測では、3D XPointがけん引するPCM分野の成長ペースは遅い。3D XPointの商業化にはIntelだけが関わっており、同社のOptane製品の市場浸透率は、今後2年間は大きく進化しないと想定していた。
IntelがOptane事業を終了したことで、PCM市場は終焉を迎えたのだろうか。
Handy氏は、「IntelはOptaneへの取り組みにより、多くのPCMウエハーを加工してきたため、必ずしもそうではない」と述べる。しかし、疑問は残るという。「そこで得られた知識は(あるいはMicronのものであっても)日の目を見ることはなくなるか、それとも他に応用されることができるだろうか」(同氏)
DRAMとNANDの間のストレージ/メモリ階層には、取り組む価値のあるギャップがあるという考え方は今後も続くだろう。Handy氏は、「そこにまた、何か新しいものが生まれるかもしれない」と語っている。
【翻訳:田中留美、編集:EE Times Japan】
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