IntelがOptane事業を終了し、Micronも既に3D XPoint事業から撤退しているということは、NANDフラッシュとDRAMとの間のストレージ/メモリ階層に、どのような意味がもたらされるのだろうか。また、PCM(Phase-Change Memory:相変化メモリ)の未来はどうなるのだろうか。
IntelとMicronは2015年7月に、3D XPointを共同で発表した。この当時、いったいどんなメモリなのか、さまざまな臆測が飛び交ったが、最も有力視されたのが、PCM(またはPCRAM)だ。PCMは、ReRAM(抵抗変化型メモリ)や、MRAM(磁気抵抗メモリ)、FRAM(強誘電体メモリ)などと同様に、新興メモリの一つとされている。
IntelとMicronは当時、「3D XPointは、NANDフラッシュの登場以来初となる、新しいクラスのメモリだ。NANDフラッシュよりも1000倍高速で、DRAMよりも8〜10倍、記憶密度が高い」と主張していた。両社は、材料系やスイッチング機構などに関する詳細はほとんど明かしておらず、スイッチング機構がバルク材料の抵抗の変化を利用したものであることや、3D XPointメモリのために化合物材料を独自開発したことなどについて述べるにとどめていた。
【訂正 2022年8月31日10時12分 当初「DRAMと比べて最大1000倍の不揮発性メモリ速度を提供しながら、密度を8〜10倍に高められる」としていましたが、「NANDフラッシュよりも1000倍高速で、DRAMよりも8〜10倍、記憶密度が高い」の誤りです。お詫びして訂正いたします。】
3D XPointは、一部の報道では“バルクスイッチングReRAM”として位置付けられたが、Optaneは現在、PCMとして分類されている。Handy氏とCoughlin氏は2019年当時、新興メモリに関するレポートの中で、3D XPointの売上高(Optaneという形での売上高)は、DRAMより安価であることがけん引要素となって伸び、2029年までには160億米ドルに達する見込みだと予測していた。当時、IntelとMicronが共同開発した技術は、重要な商用化を達成した唯一のPCMだった。
PCMについては、これまで一部の重要なプレーヤーたちが研究対象に掲げてきた。例えば、IBM Researchや、CEA-Leti(フランス原子力庁の電子情報技術研究所)のAdvanced Memory Labの他、ドイツ・ダルムシュタット(Darmstadt)に拠点を置くMerck KGaAのPerformance Materials Businessの一部門であるIntermolecular(米国やカナダではEMD Performance Materialsとして事業を展開)などが挙げられる。PCMは現在、3D NANDフラッシュ向けの製造技術のように微細化することができないという大きな課題に直面している。PCMでは、1つ1つ層を積み重ねていく必要があるため、128層のPCMの場合、既存技術に対するコスト競争力を持つことができないのだ。さらに寸法も小さいため、関与する全ての材料に成膜上の課題が独自に存在するという問題もある。
Optaneが発表された当時、業界は大いに沸いた。IntelとMicronが主要な課題に十分に対応することにより、実行可能な製品の発表に至ったのだと考えられたからだ。3D NANDフラッシュはかつて、プレーナ型NANDフラッシュを置き換えるためには、経済的に実行可能なよう製造プロセスを微調整する必要があるとされていたが、これと同様に3D XPointも、普及をサポートするためのエコシステムと、既存の製造プロセスからの脱却が必要であると考えられていた。
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