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老後を生き残る戦略として「教祖(仮)」になってみた「お金に愛されないエンジニア」のための新行動論(7)(6/10 ページ)

» 2022年09月30日 11時30分 公開
[江端智一EE Times Japan]

信徒を獲得してみよう

 とまあ、ここまでは一般論でして、私にとって最も難しそうなことは、信徒の獲得です。

 昨今、若者のみならず、全世代共通で、宗教離れが問題になっています。そんな中、私の信者として向いている人は、以下のような要件を満たす方かと思います。

 信者として取り込めそうな人間を、スペルアウトしてみました。しかし、このように羅列してみて、ふと気がついたのですが、「金持ち」という要件を除けば、「これは自分(江端)のことか?」と思い当たりました。どうやら、私は、世界中の誰よりも、まず私自身を救済したいみたいです。

 ただ、教祖と信徒が一人だけで、しかも同一人物ではお話になりません。そこで、「悩みの内容」や「本人の気質(かたぎ)」をできるだけ具体的に拾って、スコープを広げて考えてみました。

 上記の4象限の横軸である、「獲得のしやすさ」から言えば、まず「他人からの意見を全く必要としていない人」や、「同情するなら金をくれ」というような、「問題が金銭や時であることが明確である人」は、信者としては獲得しにくいと考えました。

 獲得しやすい人とは悩みを持っている人ですが、その中でも「見つけやすい人(A)」と「見つけにくい人(B)」がいます。特に”B”は相談しにくい内容の悩みである分、発見が難しく、それゆえ、信者としては好適なターゲットと言えます。

 しかし、このような分析をいくらしたところで、信徒が獲得できる訳ではありません。そして、この信徒獲得は、どの宗教団体においても同じような課題であろうと思いました。そこで、宗教団体が、どのように信徒獲得のアプローチを取っているのかを調べてみました。

 ざっくり上記の6つのアプローチがあります。#1は、前回のコラムで紹介しました。#2の大学のサークルは、当時は「げんり(原理研究会)」と呼ばれている奴らでした。#3も、前回ご紹介した『あなたの幸せを祈らせてください』の変形版のようです。いずれにしても、この辺は、今の私には、使えるアプローチではありません。

 オーソドックスには、#4の個別訪問が固いアプローチだと思いますが、#5のように、無償の選挙への労働力の提供という形で、実に与党の国会議員の半数とのコネを確立していた、例の教団のアプローチは「見事」の一言に付きます。ポスター貼りに動員するだけで、政治家とのコネがつくれるなら、こんなに有効な信徒の使い方はありません。#6は、”正社員”トラップというようなものでしょう。

 さて、ここで、上記#3の「手相見」や、#4の「戸別訪問」に、どれほどの効果があるのかを、定量的に見てみたくなって、ざっくりとしたシミュレーションプログラムを作って、動かしてみました(よくやっています(「「どんなものでも計算します」―ゆるシミュへのお誘い」)。

 シミュレーション条件は適当に以下のような設定にして、コーディングしました。

(1)対象者1000人、勧誘者5人を準備。対象者の最初の信仰力はゼロ、各対象者は、0.0〜1.0の間の実数の乱数で決められた勧誘を断わるマインドを持っている。

(2)勧誘者は、0.0〜1.0の間の実数の乱数で決められた、定数の勧誘力を持つ。

(3)勧誘人は0.1人/日の頻度で、対象者に勧誘を実施するが、対象者の勧誘を断わるマインドが、勧誘者の勧誘力を超える場合は、話を聞いてももらえない。話を聞いてもらえた場合、勧誘者の勧誘力の10%が、対象者の信仰力に加算され、勧誘を断わるマインドから減算される

(4)これを365日間続ける。

(5)信仰力が20%を越えた対象者をピックアップして(集会場に軟禁して)、0.5人/日の頻度で勧誘を続ける。

(6)これを次の365日間続ける

(コードは、こちら

 シミュレーション結果は、ざっくりこんな感じになりました。

 シミュレーション結果から感じたことは、『地道な布教活動で観察し、ターゲットをピックアップして、集会場で一気に洗脳する』という、カルト教団のメソッドの有効性が、シミュレーションでも、きっちりと現われている、ということです。

 カルト教団の被害者(カルト教団から見ると、神に選ばれたエリート)となる私たちの防衛戦略は、(1)布教活動に耳を貸さない、会話をしない、とりあわない、そして、何より(2)教団の施設には、絶対に入らない、入れられない、ということです。なにしろ、信仰力”0”を、”0.75”(最大1.0)まで引き上げることが、計算上可能なのですから。

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