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ドイツのベンチャーが試作した世界初の携帯型MP3プレーヤー(1995年〜2005年)福田昭のストレージ通信(240) フラッシュメモリと不揮発性メモリの歴史年表(21)(2/2 ページ)

» 2022年10月14日 11時30分 公開
[福田昭EE Times Japan]
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第2世代品「SP600」の苦闘とささやかな成功

 次世代品、製品名「PONTIS SP600」が登場するのは2000年のことだ。SP600の特徴は、フラッシュメモリを内蔵せず、2つのカードスロットを備えたことにある。1つはMMC(およびSDカード)のスロット、もう1つはCF(コンパクトフラッシュ)カードのスロットであり、当時の主要な小型フラッシュメモリカードを利用できた。

 SP600の発売を報じた携帯型電子機器のニュースサイト「Mobilemag」の記事によると、本体の外形寸法は90mm×65mm×20mmとかなり小さい。本体の重さは約100gである。

 SP600はMP3形式だけでなく、AAC(Advanced Audio Coding)形式とWMA(Windows Media Audio)形式の音楽ファイルを再生できた。電源は単3形乾電池(あるいは単3形二次電池)が1本だけ。再生時間は5時間である。

 ここからの記述は、AudivoのWebサイトによるものだ。SP600は当時としてはかなり優れた携帯型オーディオプレーヤーだったにもかかわらず、アジア企業の競合製品に比べると製造コストが高かった。オーストリアにあるシーメンスの工場に製造を委託したことが、コスト低減を阻害した。そしてポンティスは第2ラウンドの資金調達に失敗する。ポンティスの民生機器事業子会社であり、MP3プレーヤーを担当していた「ポンティスエレクトロニック(Pontis Electronic)」は2001年に解散を余儀なくされる。

 ところが創業者のErich Bohmは諦めない。2002年に再びMP3プレーヤー事業子会社「ポンティスメディア(Pontis Media)」を設立するとSP600の生産と販売を継続する。生産コスト(および価格)を低減したSP600は、ドイツ国内だけで約5万台を販売したという。

 2003年にポンティスメディアは80GバイトのHDDを内蔵する据え置き型のデジタルオーディオレコーダー「MS300」を発表する。デジタルオーディオのウェブメディア「Mpex.net」の記事によると、MS300はMMC/SDカード、CFカード、スマートメディア、メモリースティックのスロットを備えており、MP3形式のデータをフラッシュメモリカードとやりとりできる。しかし商業的には、うまくいかなかった。

 ポンティスは2005年に独自ブランドの民生品から撤退する。その後はハイファイオーディオのモジュールを受託開発する事業に特化した。また2005年には企業名を「オーディボ(Audivo)」に変更した。現在に至るも、Audivoは活動を継続している。

(次回に続く)

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