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中国YMTCが232層NANDを製品化、TechInsightsが分析「優位性の維持は困難」とアナリスト

中国の新興メモリメーカーYMTCが、世界初となる200層以上の3D(3次元) NAND型フラッシュメモリの商品化において、Samsung Electronics(以下、Samsung)やMicron Technologyなどの大手ライバルをリードしているという。ただし、業界アナリストの予測では、その優位性はやがて崩れていくとみられている。

» 2022年12月13日 08時30分 公開
[Alan PattersonEE Times]

 中国の新興メモリメーカーYMTCが、世界初となる200層以上の3D(3次元) NAND型フラッシュメモリの商品化において、Samsung Electronics(以下、Samsung)やMicron Technologyなどの大手競合企業をリードしているという。ただし、業界アナリストの予測では、その優位性はやがて崩れていくとみられている。

 技術情報サービスを手掛けるTechInsightsの調査レポートによると、新興企業であるYMTCが、232層3D NANDフラッシュを市場に初めて投入した企業であることが確認できたという。これは、YMTCの元代理チェアマンであるCharles Kau氏が2年前、米国EE Timesのインタビューの中で語った予測が実現したことを意味する。

 ただし、アナリストは、「YMTCがこの優位性を維持していくことは難しいだろう」と述べている。

技術的優位も、「高コストで収益性低い」

 YMTCは2016年の創立からわずか2年後に、3D NANDフラッシュメモリ技術「Xtacking(エクスタッキング)」を発表した。データIOやメモリセル動作を管理する周辺回路を1つのシリコンウエハー上に処理し、メモリセルを備えたもう1つのウエハーと、数十億ものメタルビアで接続する技術だ。

 米国の半導体市場調査会社Objective AnalysisのアナリストであるJim Handy氏は、「YMTCは、技術的優位性を獲得したものの、その技術は高コストであり収益性が低く、中国政府の支援に対する依存度を高める結果となった」と述べる。

 Handy氏はEE Timesのインタビューの中で、「私は以前から、2つのウエハーを用いて構築したものが、1つのウエハーを用いたものに対し、同じダイサイズで競争力を持つことができるのか疑問を抱いている。もし、YMTCが利益を確保する必要がないというのであれば、しばらくはそれで機能するのだろう」と述べた。

 また、同氏は、「YMTCは引き続き、中国半導体業界におけるリーダー企業の1社として、中国政府からの補助金を維持していくとみられる」と付け加えた。

米中技術戦争による課題も

 TechInsightsのアナリストによるレポートによれば、YMTCがこのような開発ペースを維持していくことは、ほぼ不可能だという。同レポートでは、「最先端技術の研究開発コストは一定ではなく、技術の進化に伴って研究開発コストは何倍にも増大していく。YMTCは、右肩上がりの開発コストを確保できるだけの十分な利益を生み出せていない」と指摘する。

 「また、中国は米国との技術戦争の最中にあるため、中国企業は特許紛争や制裁措置などの問題にも直面することになる。YMTCは、最先端の半導体製造装置へのアクセスを制限されることで、技術進展を大きく妨げられるだろう」(同アナリスト)

 Handy氏は、「米国と中国の間で、特許紛争による対立が進んでいくとみられる。YMTCが直面する課題として、特許訴訟回避のため、同社製品が米国へ供給されるのを阻止しなければならない点がある。特許法では、特許を侵害する製品の製造/使用/販売が規制されているため、YMTCの顧客企業が、特許違反のチップを使用したシステムを米国内で販売すると、特許訴訟を起こされる可能性がある」と説明した。

 Handy氏によると、YMTCと競合企業らは約550億米ドルの3D NANDフラッシュ市場においてシェアを争っているという。中国で組み立てられるスマートフォンは、NANDフラッシュを使う主要製品の一つだ。世界最大のスマホ市場を有する中国では、AppleやSamsungのスマホの組み立ても行われている。

【翻訳:田中留美、編集:EE Times Japan】

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