TDKは2023年2月21日、2520サイズと小型でありながら定格電流12Aを実現した「業界初」(同社)の車載用積層チップビーズ「MPZ2520SPHシリーズ」を開発し、量産開始したと発表した。
TDKは2023年2月21日、2.5×2.0×0.85mmと小型でありながら定格電流12Aを実現した「業界初」(同社)の車載用積層チップビーズ「MPZ2520SPHシリーズ」を開発し、量産開始したと発表した。
近年、電気自動車(EV)などのパワートレイン系では、大電流に対応したチップビーズのニーズが高まっている。だが、従来12Aといった大電流が必要な電源回路では3225サイズ(3.2×2.5mm)以上の大型品を用いるか、小型で12A未満のチップビーズを複数用いた並列構成を行う必要があった。
今回、TDKは、コイルパターンの設計を改善したことによって、業界で初めて2520サイズで定格電流12Aの保証を実現。MPZ2520SPHシリーズを用いた場合、従来3225サイズ品を使用した場合と比べ、実装面積を37%削減できるという。
また、定格電流が不足しているチップビーズを複数用いた並列構成の場合(下図内右下)、たとえ同じチップビーズを使用したとしても、製造上のばらつきで直流抵抗が多少異なることから、各ラインに流れる電流も不安定な状態となってしまう。新製品1チップで対応すれば印加電流の安定化が可能になると同時に、部品数および実装面積の削減もできるとしている。
MPZ2520SPHシリーズは、インピーダンスが7.0±3Ω(100MHz時)、直流抵抗が最大1.25mΩ。動作温度範囲は−55〜+125℃で、定格電流は85℃時に12A、125℃時に10Aと、保証温度環境であれば定格電流10A以上を保証する。また、車載用電子部品の信頼性試験規格AEC-Q200にも準拠している。なお、今回、同社はAEC-Q200には対応しないが特性は同様の民生グレード品も用意している。
ターゲットアプリケーションは、車載向けの各種ECUやパワートレイン、車体制御、カーマルチメディアなどを想定。説明担当者によると、「既に複数顧客が車載向けバッテリーラインのノイズ対策で検討している」という。民生向けについても、基地局やPC、サーバなどの他、スマートグリッドやロボットの電源といった産機での導入を狙っていく。MPZ2520シリーズのサンプル価格は1個40円(税別)で、当初は月産1000万個の生産を予定している。
また、同社は今後、材料の工夫によって重畳特性の改善を図り、「大電流対応かつ特性が変わらない高付加価値な製品開発を続ける」と説明。2025年以降の新製品投入を目指すとしている。
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