今回は、化石燃料を使わない発電技術の動向を簡単に解説する。
電子情報技術産業協会(JEITA)が3年ぶりに実装技術ロードマップを更新し、「2022年度版 実装技術ロードマップ」(書籍)を2022年7月に発行した。本コラムではロードマップの策定を担当したJEITA Jisso技術ロードマップ専門委員会の協力を得て、ロードマップの概要を本コラムの第377回からシリーズで紹介している。
本コラムの第406回(シリーズ第30回)から前々回(第417回)までは、第2章第5節(2.5)「モビリティー」の概要を説明してきた。前回からは、第2章第6節(2.6)「新技術・新材料・新市場」の概要を紹介している。
「新技術・新材料・新市場」の最初のテーマである「2.6.2 エネルギー」では前回、日本のエネルギー需給構造と電力需給構造を2050年まで予測してみせた。総エネルギー量は減少するものの、総電力量は2050年に向けて増加する見通しである。
このため、電力供給技術における地球温暖化対策が大きな課題となった。温室効果ガスの排出量を減らすには、化石燃料を使わずに電力を供給する(発電する)仕組みとその普及が欠かせない。今回は、化石燃料を使わない発電技術の動向を簡単に解説する。
化石燃料を使わない発電技術の種類はかなり多い。「太陽光発電」「風力発電」「水力発電」「海洋エネルギー発電」「地熱発電」「バイオマス発電」「原子力発電」「水素・アンモニアを燃料とする発電」「燃料電池」「二次電池」などがある。
前回でも述べたように、「原子力発電」を除くと日本で最も発電量が大きな技術は「太陽光発電」であり、今後も伸びが期待されている。太陽光発電では、「太陽電池セル」を数多くならべた太陽電池モジュール(太陽電池パネル)を1つの単位(製品)として扱うことが多い。この太陽電池モジュールをさまざまな場所に並べることで、大規模なものでは発電所、小規模なものでは住宅屋根(屋上)での発電などに利用する。
ここで太陽電池セルとはpn接合を備えた半導体素子で、受け取った光を電流に変換する。太陽電池セルの出力は0.5W前後と非常に小さいので、セルを数多く集めて出力が100Wを超えるモジュール(パネル)を形成し、モジュール(パネル)を製品の単位とする。
太陽電池セルの半導体材料には単結晶シリコン、多結晶シリコン、化合物半導体、有機半導体などがある。また同じ材料でも変換効率を高めるためにセルの構造を工夫していることが多い。
太陽光発電以外で期待がかかるのは、風力発電だろう。風力発電は大規模な発電システムを構成可能であるものの、適切な場所の選定は簡単ではない。水力発電はすでに開発しつくされており、これ以上の拡大は難しいとされる。
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