千葉大学と独カールスルーエ工科大学で構成される国際共同研究チームは、これまで「第一種超伝導体」と呼ばれてきた鉛(Pb)が、超低温環境では「第一種超伝導体」ではないことを発見した。
千葉大学大学院工学研究院の山田豊和准教授らによる研究グループと、独カールスルーエ工科大学のウルフヘケル教授らによる研究グループで構成された国際共同研究チームは2023年9月、これまで「第一種超伝導体」と呼ばれてきた鉛(Pb)が、超低温環境では「第一種超伝導体」ではないことを発見したと発表した。
超伝導物質は、極低温で抵抗が「ゼロ」となる。このため省エネ材料としてリニアモーターカーなどに採用され、実用化に向けた研究が進む。超伝導物質に磁場をかけ、その磁力が臨界磁場に達すると、瞬時に超伝導から普通の金属に変わるという。こうした物質は「第一種超伝導体」と呼ばれている。Pbも100年前から第一種超伝導体と考えられてきた。
これに対し、同じ超伝導物質でありながら、ニオブ(Nb)のように臨界磁場を超えてもすぐには金属に変化しない物質もある。磁場がNb内に侵入して筒状に超伝導内を貫く。そして貫いた内部だけが金属となる。こうした物質は「第二種超伝導体」と呼ばれている。
共同研究チームは今回、試料としてPbを用い検証を行った。実験は45mK以下(−273.105℃)の超低温環境かつ、宇宙空間と同じ超高真空環境で行った。Pb試料に約0.02Tの磁場をかけ、STM(走査トンネル顕微鏡)を用いて物質表面を観察した。この結果、電子分光像の中に、Pbを筒状に貫く「Vortex」と呼ばれる磁場を発見した。Vortexの周囲は超伝導であり、Pbが超低温環境で「第二種超伝導体」のような超伝導状態となることを明らかにした。
研究グループはリリースで「超伝導の新たな理解を深めることで、未来の超伝導開発につながると期待している」とコメントしている。
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