通常、何千人ものパレスチナ人が日々、ガザ地区とイスラエルの境界線を越えて働き、輸送や物流、製造、食品、清掃、医療など、あらゆる業界で不可欠なサービスを提供している。その多くは高度なスキルを持った労働者だ。
イスラエル国防軍によるガザ封鎖によって、事実上全ての境界検問所が閉鎖され、これらの職員は誰も職場に行くことができなくなっている。そのため、ほとんどの業界で、業務に必要な人員が不足している。
イスラエルは、パレスチナ人とイスラエル人入植者が暮らすヨルダン川西岸との境界をまだ封鎖していない。しかし、境界の警備はさらに厳しくなり、多くのパレスチナ人は通常通りに境界を越えることができなくなるとみられる。
フライトの欠航や航路の封鎖などの交通機関の混乱もサプライチェーンにも大きな影響を与えている。多くの航空会社がイスラエル発着のフライトを運休しているため、旅行者が足止めされ、物資の輸送に影響が及んでいる。イスラエル海軍によるさらなる規制によって、海上貨物の出入国がますます困難になっている。
テルアビブのベングリオン空港では数千人の旅行者が足止めされ、多くのイスラエル人がさまざまな国から帰国できなくなっている。
UPS航空とFedExの両社も、他の航空会社と同様にイスラエルへの国際線を大幅に削減していたが、UPSは2023年10月9日、イスラエルへのフライトを停止したと発表した。
海上輸送にも支障が出ている。イスラエル海軍がさらなる規制を課しているため、貨物の出入国がますます困難になっている。
さらに、米国は、世界最大かつ最新鋭の空母を含むUSSジェラルドR.フォード空母打撃群を派遣した。Naval Technologyによると、同艦はF-35戦闘機を含む最大90機の航空機を搭載できるという。
総合的に見ると、イスラエルとハマスの紛争は、エレクトロニクスのサプライチェーンに大きな課題と不確実性をもたらし、多国籍企業や生産施設、熟練労働者と商品の移動に影響を及ぼしている。こうした状況は、地政学的な紛争に対するグローバルサプライチェーンの脆弱性と、このような激動の時代における適応性と緊急時対応計画の必要性を浮き彫りにしている。
【翻訳:滝本麻貴、編集:EE Times Japan】
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