鳥取県は「2024国際宇宙産業展ISIEX」に出展し、県内の企業が製作に携わっている月面探査ローバーや、宇宙産業に進出している県内企業の取り組みを紹介した。
鳥取県は「2024国際宇宙産業展ISIEX」(2024年2月20〜22日/東京ビッグサイト)にて、県内の企業が製作に携わっている月面探査ローバーや、宇宙産業に進出している県内企業の取り組みを紹介した。
鳥取県は宇宙産業を地域の将来を支える産業として位置付け、衛星データを活用した事業への支援や実証実験施設の整備などを通して宇宙産業の創出を図っている。鳥取砂丘の月面実証フィールド「ルナテラス」などがその例だ。鳥取砂丘は砂の粒が細かく起伏が大きいため、月面を想定した実証実験が行いやすいという。
宇宙機器や飛翔体の開発と製造を手掛けるスタートアップのたすくは、鳥取県内の企業と連携し、月面探査ローバーの開発を行っている。ブースではローバーが鳥取砂丘の砂の上を走行するデモ展示を行った。
ブースで説明を行ったたすく CEO(最高経営責任者)の古友大輔氏は「従来のローバーの走行速度は速いものでも時速15km程度で、直径約3500kmの月の探査には長い時間を要する」と説明する。月面探査の高速化を実現するため、たすくは時速60kmのローバーの開発を目指している。
展示されたモデルは、どのような形状のタイヤがローバーの高速化に適しているかを検証したものだという。タイヤの表面に凹凸を施すなど、月面の細かな砂をグリップしながら走行できるようにしている。さらに、高速化を実現するためには熱設計も重要だ。高速走行による負荷で機器から熱が生じると、ほぼ真空状態の月面では熱が逃げないため、高速走行と熱対策のバランスが大切だという。
たすくは今後、シミュレーションやフィールドでの実証実験を続けていくとしていて、すでにルナテラスで実証実験を行っている。古友氏は「将来的には1台のローバーで月面の走行や地下資源の解析、採掘に取り組みたい」と語っていた。
鳥取市を拠点に金属加工/精密機械部品製造を手掛けるMASUYAMA-MFGも共同出展した。同社は高精度の金属加工を得意としていて、1つのブロックから細かく歯やうろこまで切り出した龍のオブジェや、高強度の難削材であるインコネル718を切削加工したサンプル品などを展示した。
ブースで説明を行ったMASUYAMA-MFG 社長の益山明子氏は「インコネル718は一般の加工業者ではなかなか削れない材料だ」と、同社の技術力をアピールした。
同社はたすくに部材を供給していて、ローバーやキューブサット(超小型衛星)への採用事例があるという。益山氏は「宇宙用途の部材を供給する上で最も大変なことは品質保証だ。日本の町工場は技術力が高いので、品質の保証力さえ高まれば宇宙産業の裾野は広がる」と話した。
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