インフィニオン テクノロジーズ ジャパンは2024年2月6日、医療機器の開発/販売を行うフィンガルリンク、豊田通商グループのエレクトロニクス商社であるネクスティ エレクトロニクスと、60GHzミリ波レーダーを活用した高齢者の見守りシステムを発表した。
インフィニオン テクノロジーズ ジャパン(以下、インフィニオン)は2024年2月6日、医療機器の開発/販売を行うフィンガルリンク、豊田通商グループのエレクトロニクス商社であるネクスティ エレクトロニクス(以下、ネクスティ)と、60GHzミリ波レーダーを活用した高齢者の見守りシステムの開発/導入に向けて協業すると発表した。
同システムに使われるミリ波レーダー生体情報検出システムは、フィンガルリンクが開発したもので、インフィニオンの60GHzレーダーセンサー「XENSIV BGT60ATR24C」やフィンガルリンクのサーモセンサーなどを搭載している。これにより、服を着たまま非接触で、対象者の在/不在情報や、呼吸数、心拍数、睡眠情報、尿失禁情報といったバイタル情報を測定できる。
また、通信機能を内蔵しているため、測定したデータをクラウドサーバに送信し、フィンガルリンクの独自アルゴリズムで解析、設定した閾値を越えた場合にアラートを鳴らすなど、リアルタイムで正確な生体情報のモニタリングを遠隔で実現する。端末機器は、ポストカードほどのコンパクトなサイズで、卓上や壁、天井などにも簡単に設置できる。
XENSIV BGT60ATR24Cは、送信アンテナ2個、受信アンテナ4個を搭載した、FMCW(周波数変調連続波)動作用の60GHzレーダーセンサーだ。従来の赤外線センサーよりも高精度で、布団や家具といった障害物の有無にかかわらず、人の動きを検知できる。
XENSIV BGT60ATR24Cの搭載を含めた高齢者の見守りシステムの開発においては、ネクスティが出資する韓国Smart Radar Systemのアンテナ設計、モジュール化ノウハウが活用されている。ネクスティは、フィンガルリンクと契約し、同システムの販売支援やバイタルセンシングの新たなニーズ発掘も行う。
インフィニオン パワー&センサーシステムズ事業本部 センサーシステムズ&IoT 部長の浦川辰也氏は、フィンガルリンクの高齢者見守りサービスにXENSIV BGT60ATR24Cが採用された理由について「性能の高さや信頼性はもちろん、対応チャンネル数が多く、将来的に拡張性が見込めることが理由だ。他社製品と比較して消費電力が少なく、システム稼働時の発熱が少なかったことが評価された」と語った。
今回の協業の背景について、浦川氏は「インフィニオンは、高齢化社会や医療/介護現場の人手不足という社会問題の解決に、半導体技術で貢献したいと考えている。今回、フィンガルリンク、ネクスティと共同で取り組んできた高齢者見守りシステムにおいて、介護施設での本格運用開始および、量販店などでの一般販売のメドが立ったため発表に至った」と説明した。
少子高齢化が深刻化する日本では、医療や介護の現場での人手不足が社会問題となっている。介護の現場では、入居者のバイタル情報を手作業で確認している場合が多く、担当者の負担も大きい。カメラやスマートウォッチなどを用いて、非接触かつリアルタイムにバイタルを測定するソリューションも存在するが、こうしたケースでは、「対象者が24時間行動を監視されているようなストレスを感じてしまう」「認知症などを患う対象者がスマートウォッチを自ら外してしまう」などが課題になっている。
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