ミネベアミツミによる日立のパワー半導体事業買収が完了した。日立製作所の子会社である日立パワーデバイスを完全子会社化。また、日立製作所グループのパワーデバイス事業に関する海外販売事業の譲受も完了した。これに伴いミネベアミツミは、日立パワーデバイスの名称を「ミネベアパワーデバイス」に変更した。
ミネベアミツミは2024年5月2日、日立製作所の子会社である日立パワーデバイスの全株式を取得し100%子会社化を完了したと発表した。また、日立製作所グループのパワーデバイス事業に関する海外販売事業の譲受も完了した。これに伴いミネベアミツミは、日立パワーデバイスの名称を「ミネベアパワーデバイス」に変更した。
ミネベアミツミは2023年11月、日立製作所のパワー半導体事業買収を発表していた。買収価格は非公開としていたが、「おおむね事業規模に匹敵するといっていい」と説明していて、買収額は400億円程度とみられる。なお、2024年2月の決算説明会では、統合後の損益インパクトのイメージは売上高が400億円、営業利益が40億円になると説明していた。
ミネベアミツミは、成長戦略として、8つの分野をコア事業とする「8本槍(やり)戦略」を掲げている。パワー半導体も手掛ける同社のアナログ半導体事業は、この8本槍の一つで、リチウムイオン電池保護IC、電源IC、タイマーIC、MEMSセンサー、磁気センサー、車載用メモリなどのほか、IGBTをはじめとするパワー半導体領域で展開。同事業の売上高を現在の800億円規模から、2030年度にはM&Aも含め3000億円規模へと成長させることを目標とし、事業規模の拡大と事業価値の向上を推進している。
ミネベアミツミは、これまで、IGBTについてはチップビジネスの展開にとどまり、モジュール化技術は有していなかった。同社は今回の買収によって、パッケージおよびモジュールの後工程技術および生産能力を取得し、「パワー半導体を開発から一貫生産できる垂直統合型のビジネス展開が可能となる」としている。
また、ミネベアパワーデバイスが有する「SG-IGBT」などの独自技術をミネベアミツミのチップ製造技術と組み合わせ、「シリコンパワーデバイスでSiC(炭化ケイ素)に近い性能」を実現する技術開発、SiC技術者集団も新たに獲得したことで、高耐圧SiC技術を活かしたSiCパワーデバイス事業の発展など、買収によるシナジー効果を発現させ「パワー半導体市場をリードできる競争力のある企業への躍進を図る」としている。
具体的な両社技術の活用による新製品開発においては、高圧モーター制御のノウハウをミネベアミツミのDCモーター製品へ活用することによるモーターソリューションの新提案、先端高効率デバイスなどを電源へ取り込むことによるハイパワー電源製品の市場投入、特殊プロセス技術と設計技術の融合やエイブリック製品との組み合わせなどによる医療向けデバイス製品の増強等を想定しているという。
ミネベアパワーデバイスの会社名変更日は2024年5月2日。資本金は4億5000万円、取締役社長は鈴木雅彦氏で、いずれも変更はない。
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