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自動車の末端までマイコンいらずでイーサネット接続、ADIの独自技術通信遅延を抑制、SDVへの活用も

アナログ・デバイセズ(ADI)は「人とくるまのテクノロジー展 2024 YOKOHAMA」に出展し、同社の独自技術「E2B」(Ethernet to the Edge Bus)を紹介した。自動車の末端部分までをイーサネットで接続し、通信遅延を抑制できるという。

» 2024年06月20日 11時30分 公開
[浅井涼EE Times Japan]

 アナログ・デバイセズ(ADI)は「人とくるまのテクノロジー展 2024 YOKOHAMA」(2024年5月22〜24日、パシフィコ横浜)に出展し、車載イーサネット規格である10BASE-T1Sに準拠した同社の独自技術「E2B」(Ethernet to the Edge Bus)を紹介した。自動車の末端部分までをイーサネットで接続し、通信遅延を抑制できるという。

マイコンなしで末端までイーサネット接続

 現在、自動車の基幹ネットワークやECU(電子制御ユニット)間の接続にはイーサネットの導入が進んでいるが、センサーなどの末端部分はいまだにLIN(Local Interconnect Network)/CAN(Controller Area Network)が主流だ。そのため基幹ネットワークと末端部分の接続にあたっては規格を変換する必要があり、通信遅延の一因となっている。

 2020年に策定された車載イーサネット規格10BASE-T1Sは、こうしたCANやLINで接続されているセンサーやアクチュエータとの接続を置き換えることが想定されていて、末端部分までイーサネットでの統一が可能になる。ただし、末端部分にマイコンやソフトウェアスタックを搭載する必要があり、コストや設計の手間が大きくなってしまう。

 ADIが開発している10BASE-T1S準拠の技術「E2B」は、独自のIP(Intellectual Property)によって、マイコンやソフトウェアスタックを用いずに末端部分までのイーサネット接続を可能にするものだ。コストの高さや設計の複雑さといった課題を解消して通信遅延を抑制できる。

 「自動車の基幹から末端までイーサネットで接続すれば、基幹部分のソフトウェアを更新するだけで末端部分まで容易に機能を刷新できるようになる。E2BはSDV(ソフトウェア定義型自動車)との親和性も高い」(ブース担当者)

ボールが落ちそうで落ちない、リアルタイムモーター制御のデモ展示も

 ブースでは、モーターとコントローラーをE2Bを用いて接続し、リアルタイムで制御するデモ展示を行った。

ADIが展示した「E2B」デモ。モーターをリアルタイム制御し、ボールは落ちそうで落ちない

 ボールを乗せたパネルの傾きを4カ所のモーターで調整し、ボールが転がり落ちないようにするというものだ。各モーターはセンサーでボールの位置を検知し、その情報をコントローラーに伝達する。コントローラーからはボールが落ちないようにモーターの動きを制御し、パネルの傾きを調整する。

 各モーターからコントローラーまでは約4mのケーブルで接続されている。通信遅延があると位置情報の伝達からモーター制御までに時間がかかりボールが落ちてしまうが、E2Bでは通信遅延を抑えられるため、すぐにボードの傾きが調整されてボールは落ちずに維持されていた。

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