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「Intel 3」は転換点となるか ファウンドリー事業の正念場Intelが詳細を発表(2/2 ページ)

» 2024年06月26日 11時30分 公開
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製造戦略の肝となる「Intel 3」

 Intel 3は現時点では供給が限られている最先端プロセスノードであるため、Intel Foundryはより競争力のある価格を提示して赤字を埋めることができるだろう。また、Intel 3は、重要な外部ファウンドリー顧客との関係を確保しながら、ファウンドリーとしてのIntelの競争力を示す重要なプラットフォームとしても機能する。

 Intel 3は、Xeon 6とともに、Intelの製品戦略における重要な転換点として位置付けられ、Xeon製品ラインの競争力を高め、進化するデータセンター向けプロセッサ要件のニーズに対応するものである。また、Intelは、Intel 3プロセスノードを少なくとも10年間は活用する計画だという。これによって、通常は最先端のプロセスノードを使用しないが、時間の経過とともに新しいプロセスノードに移行する産業用および民生向けIoT(モノのインターネット)アプリケーションなど、他の製品にもプロセスロードマップを提供できるようになる。

Intel 3の派生プロセス

「Intel 4」「Intel 3」のワット当たりの性能の比較 「Intel 4」「Intel 3」のワット当たりの性能の比較[クリックで拡大] 出所:Intel

 前述したように、Intel 3は、業界の多くが予想していたハーフノード以上のものである。Intel 3は、Intelがさまざまなアプリケーション/市場セグメント向けに複数のバージョンのプロセスを導入する最初のプロセスノードである。1つ目は、Intel 3および「Intel 3T」と呼ばれる基本プロセスだ。「T」はTSV(シリコン貫通電極)を意味している。

 Intelは、Xeon 6の製品ラインでTSVを利用してシリコンインターポーザ/ベースダイにダイをマウントする予定だが、TSVはダイのスタッキングにも使用できる。「Intel 3E」プロセスは、ストレージコントローラーのようなアプリケーション向けのアナログ処理を必要とするチップに使用できる。Intel 3Eの機能強化には、ネイティブ1.2Vゲートや静音ノイズ遮断のためのディープN-Well、ロングチャネルアナログデバイスなどがある。

 最後の「Intel 3PT」プロセスは、AI(人工知能)やHPC(高性能コンピューティング)、一般的なコンピューティングアプリケーション向けだ。Intel 3PTは、狭ピッチTSV、ハイブリッドボンディング、高電圧のサポートなど、その他の性能強化を実現したIntel 3プロセスのスーパーセットである。Intel 3プロセス世代は、Intel 4よりも性能効率(ワット当たりの性能)が最大18%向上する。Intel 3PTではさらに1〜2%向上し、過去の平均値である15%よりもさらに高くなるという。

Intel 3の派生プロセスの概要 Intel 3の派生プロセスの概要[クリックで拡大] 出所:Intel

 この性能強化では、イノベーションの3本柱全てが変更されているため、Intel 3は単なるハーフノードの強化ではなく、“真のプロセスノードの飛躍”である。トランジスタの設計面では、Intel 4プロセスが新しい2×2フィン構成、セル境界のワイドメタルゼロ、より高密度の210nmセル高によって、高性能3×3フィンプロファイルと240セル高を実現しているのに対し、Intel 3は、トランジスタのフィンプロファイルをより薄くしてコンタクト構造を改良したという。

 その結果、より低い電圧と周波数におけるトランジスタの制御が改善され、トランジスタの性能と密度が向上し、トランジスタの性能効率を向上させる重要な指標であるリーク電流が低減した。ただし、Intel 4よりもトランジスタ密度が向上するのは、210nmセルライブラリの使用時のみである。その他の機能強化には、オプションの相互接続スタックを備えた3つのメタル層オプション(14、18、21)、上位層での電力ルーティングの増加、M1-M6層の抵抗と静電容量の改善などがある。

Intel 3のトランジスタ構造 Intel 3のトランジスタ構造[クリックで拡大] 出所:Intel

 プロセス技術に関しては、Intel 3はより多くのステップに第2世代のEUV(極端紫外線)リソグラフィ装置を使用して全体的なプロセスステップ数を削減すると同時に、設計構成を改良した。さらに、Intelは材料技術の変更についても示唆しているが、これは機密情報とされ、さらなる詳細は提供されなかった。

 あるプロセスノードから次のプロセスノードへ移行する際に材料を変更することは、困難な作業となることがある。あるプロセスノードでうまく機能するものが、別のプロセスノードではうまく機能しない場合があるためだ。しかし、Gelsinger氏は、「(Intelは)周期表にある材料を使い尽くすまで歩みを止めない」と述べている。

Intel 3で製造したトランジスタの断面図 Intel 3で製造したトランジスタの断面図[クリックで拡大] 出所:Intel

 技術的な詳細は全て、IEEE Symposium on VLSI Technology & Circuitsで発表された論文またはIntelのブログで読むことができる。

【翻訳:滝本麻貴、編集:EE Times Japan】

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