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稼働している!? 中国へ大量出荷された半導体製造装置の謎大山聡の業界スコープ(78)(2/3 ページ)

» 2024年07月17日 11時30分 公開

台湾、韓国をしのぐ、中国向けの製造装置出荷

 主要半導体製造装置メーカーの直近の地域別出荷実績を示す。

東京エレクトロンの地域別出荷実績[クリックで拡大] 出所:同社決算資料よりGrossberg作成
Applied Materialsの地域別出荷実績[クリックで拡大] 出所:同社決算資料よりGrossberg作成
Lam Researchの地域別出荷実績[クリックで拡大] 出所:同社決算資料よりGrossberg作成
ASMLの地域別出荷実績[クリックで拡大] 出所:同社決算資料よりGrossberg作成

 出荷実績を見ると、各社の動向にバラツキはあるが、台湾、韓国向けの出荷減少を中国向けの増加で補っている、という共通点が見えてくる。対中規制が強化されている中、最先端プロセスの装置は出荷できないにもかかわらず、規制対象ではないレガシープロセスのための装置だけで中国にはこれだけの需要があるのだ。大幅な減収を免れた装置メーカー各社にとってはありがたい話だろう。

 ただ、これだけの装置が出荷されれば、中国産の半導体が世界市場にあふれるのではないか、需給バランスにも影響が出て、半導体市況がまた暗転するのではないか、と考えるのが普通だろう。しかし直近の半導体市況は回復基調にある。一部、車載半導体やパワーデバイスなど、2年以上にわたって供給不足が続いた分野では、不足時の過剰発注が過剰在庫を発生させ、在庫調整に苦心している。「中国産の半導体が増えたから不調」という認識は全くない。そもそもこれらの分野では、中国産の半導体はほとんど存在しないのが実情である。つまり、これだけ大量の装置が中国向けに出荷されているにもかかわらず、中国産のデバイスが世界半導体市場の動向にほとんど影響を及ぼしていない、という不思議な実態が浮かび上がってくるのである。これはいったいどういうことだろうか。

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